文化財建造物である家屋の相続税評価

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地方自治体の「文化財保護条例」や、文部科学省が定める「文化財保護法」において、「文化財建造物である」と指定を受けた家屋のことを指します。
指定を受けた後、維持管理や修復などに様々な制約が発生することから、税制上で相続税等の評価を行う際は、特別の評価方法を行います。

「固定資産税評価額が付されていない文化財建造物である家屋」とは

通常の場合は文化財建造物である家屋であっても、一般の家屋と同様に固定資産税評価額が評価されて固定資産課税台帳に記載されます。ただし、租税特別措置法の規定やそれに基づく各自治体の条例で、次のような重要文化財である家屋は固定資産税が非課税となり、固定資産評価額が台帳に記載されないことがあります。
(1)重要文化財,重要有形民俗文化財,史跡名勝天然記念物として指定され,又は重要美術品として認定された家屋。
(2)重要伝統的建造物群保存地区内の伝統的建造物(風俗営業に使用されるものを除く。)で文部科学大臣が告示するもの。

固定資産税評価額が付されている文化財建造物である家屋の評価方法

税制上で固定資産税評価額が付されている文化財建造物である家屋の評価価額は、まずその家屋が「文化財建造物でないと仮定した」場合の価額を評価して算出します。その際の評価は「財産評価総則基本通達第3章89:家屋の評価」によって評価した金額にて行います。次に、その金額に「財産評価総則基本通達第2章24-8:文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価」に定められている割合を掛け算して、控除額として算出します。家屋が文化財でないと仮定して評価した価額から、控除分を引き算した残りの金額が、税制上での固定資産税評価額が付されている文化財建造物である家屋の評価価額となります。

固定資産税評価額が付されていない文化財建造物である家屋の評価方法

税制上で固定資産税評価額が付されていない文化財建造物である家屋の評価価額は、まずその家屋を課税時期に再建築したと想定した場合の再建築に関わる合計の費用を算出します。次に、その家屋の償却割合を想定します。これは「『建築の時から朽廃の時までの期間に相当する年数』のうちに占める『建築の時から課税時期までの期間に相当する年数』の割合(一年未満の端数は一年に切り上げ)」にて算出します。
その上で、再建築価格の90%の額に償却割合を掛け算して、得られた額を再建築価格から控除して、のこった額を更に70%にした額が、税制上での固定資産税評価額が付されていない文化財建造物である家屋の評価価額となります。

【財産評価総則基本通達第3章89-2】(文化財建造物である家屋の評価)
文化財建造物である家屋の価額は、それが文化財建造物でないものとした場合の価額から、その価額に24-8((文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価))に定める割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する。
 なお、文化財建造物でないものとした場合の価額は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に掲げる金額によるものとする。(平16課評2-7外追加、平20課評2-5外改正)
(1) 文化財建造物である家屋に固定資産税評価額が付されている場合
その文化財建造物の固定資産税評価額を基として前項の定めにより評価した金額
(2) 文化財建造物である家屋に固定資産税評価額が付されていない場合
その文化財建造物の再建築価額(課税時期においてその財産を新たに建築又は設備するために要する費用の額の合計額をいう。以下同じ。)から、経過年数に応ずる減価の額を控除した価額の100分の70に相当する金額
(注) 「経過年数に応ずる減価の額」は、再建築価額から当該価額に0.1を乗じて計算した金額を控除した価額に、その文化財建造物の残存年数(建築の時から朽廃の時までの期間に相当する年数)のうちに占める経過年数(建築の時から課税時期までの期間に相当する年数(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。))の割合を乗じて計算することに留意する。

【財産評価総則基本通達第3章89】(家屋の評価)
家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条((固定資産課税台帳の登録事項))の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。以下この章において同じ。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。(昭41直資3-19・平3課評2-4外・平16課評2-7外改正)

【財産評価総則基本通達第2章24-8】(文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価)
文化財保護法(昭和25年法律第214号)第27条第1項に規定する重要文化財に指定された建造物、同法第58条第1項に規定する登録有形文化財である建造物及び文化財保護法施行令(昭和50年政令第267号)第4条第3項第1号に規定する伝統的建造物(以下本項、83-3((文化財建造物である構築物の敷地の用に供されている土地の評価))、89-2((文化財建造物である家屋の評価))及び97-2((文化財建造物である構築物の評価))において、これらを「文化財建造物」という。)である家屋の敷地の用に供されている宅地の価額は、それが文化財建造物である家屋の敷地でないものとした場合の価額から、その価額に次表の文化財建造物の種類に応じて定める割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する。
 なお、文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地(21((倍率方式))に定める倍率方式により評価すべきものに限る。)に固定資産税評価額が付されていない場合には、文化財建造物である家屋の敷地でないものとした場合の価額は、その宅地と状況が類似する付近の宅地の固定資産税評価額を基とし、付近の宅地とその宅地との位置、形状等の条件差を考慮して、その宅地の固定資産税評価額に相当する額を算出し、その額に倍率を乗じて計算した金額とする。(平16課評2-7外追加・平18課評2-27外改正)

文化財建造物の種類 控除割合
重要文化財 0.7
登録有形文化財 0.3
伝統的建造物 0.3

(注) 文化財建造物である家屋の敷地とともに、その文化財建造物である家屋と一体をなして価値を形成している土地がある場合には、その土地の価額は、本項の定めを適用して評価することに留意する。したがって、例えば、その文化財建造物である家屋と一体をなして価値を形成している山林がある場合には、この通達の定めにより評価した山林の価額から、その価額に本項の文化財建造物の種類に応じて定める割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する。

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