温泉権とは、古来「湧出した鉱泉地の温泉を優先的に利用できる権利」のことで、特定の法律で定められているものではありませんが、「慣習法」という扱いで裁判所の判例(大審院昭和15年9月18日)により旧民法上の「物権」のひとつとして認められており、戦後の改正新民法においてもその判例が引き継がれているものです。
温泉権が物権であるという事で、民法上は他の物権と同じように「占有権や所有権」などの保有する権利のみならず、「質権や抵当権」等の担保物件としての権利が認められています。そのために温泉権も税法上は資産とみなされ、相続等の際には相続税の対象となります。
温泉権の評価
税制上で温泉権を評価する場合、元々温泉権自体が特定の法律で定められていない「慣習法」であるため、具体的に一律の算定評価算定方法がある訳ではありません。個々の温泉権の設定条件ごとに個別に評価することになります。
温泉権の評価に際しては、次のような点が温泉権の評価の根拠となります。
(1)当初から温泉を掘る目的で掘削工事を行った際の費用。
(2)鉱泉地から温泉の使用地まで温泉を引き湯する際の、引き湯施設の建設や維持点検に関わる費用。
(3)温泉を利用することで生ずる、観光資源や医療資源として得られる利益分。
(4)過去に実際に温泉権を売買によって取引した際の実例価格。
(5)温泉権の保持期間。
このような点を考慮に入れて国税庁にて検討を行い、個別に税制上の温泉権の評価価額を決定します。
【財産評価総則基本通達第2章78】(温泉権の評価)
前項の「温泉権の価額」は、その温泉権の設定の条件に応じ、温泉権の売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。