ここでは、無尽または頼母子に関する権利の価額の相続税法上の評価方法について説明します。
1.無尽、頼母子とは
無尽(むじん)や頼母子(たのもし)は、古くから伝わる地域金融の仕組みです。大規模なものや営利目的のものは銀行や消費者金融に転換されましたが、現在でも日本の各地で活発に行われています。地域によってさまざまな名称があり、無尽、頼母子のほかに、無尽講、頼母子講と呼ばれることもあります。沖縄県などでは模合(もあい)と呼ばれることもあります。以下では、これらを総称して無尽と呼ぶこととします。
無尽の仕組みは次のとおりです。
(1) 講と呼ばれる組織に加盟した地域の住民が、講に対して金品を払い込みます。
(2) 講に集まった金品は、抽選、入札または順番によって定められた特定の加盟者に給付されます。
(3) 給付を受けた加盟者は、受け取った金品を一括または分割で講に返済します。その時、金利を上乗せすることもあります。
(4) 一定の期間を過ぎると満期を迎え、払い込んだ金品が加盟者に払い戻されます。
多くの場合は、払い込み、給付と払い戻しが継続的に行われます。
無尽の起源は鎌倉時代までさかのぼり、当初は庶民の相互扶助の目的で始まったとされています。のちに大規模化する無尽が現れ、明治時代には営利目的の無尽も現れました。営利目的の無尽の多くは、1951年の相互銀行法により相互銀行に転換され、さらに第二地方銀行に転換されて現在に至っています。このほか、消費者金融に転換した無尽もあります。
現在の無尽の中には、資金の融通という役割は消えて、旅行や親睦会などを目的に資金を出し合うというように、地域の親睦組織として機能しているものもあります。なお、営利目的の無尽として存続するものは1社だけになりました。
2.無尽に関する権利の評価
財産評価基本通達では、無尽に関する権利の価額は、課税時期までの掛金総額によって評価することとされています。つまり、被相続人が亡くなるまでに無尽に払い込んだ金額で評価することになります。金利が加算されたり、差し引かれたりすることはありません。
なお、相続人は、預貯金・不動産などの資産(プラスの財産)だけでなく、借入金などの債務(マイナスの財産)も引き継がなければなりません。つまり、無尽から金品の給付を受けているときに被相続人が亡くなった場合は、相続人は無尽に対して給付を受けた金品を返済する義務を負うことになります。
【財産評価基本通達】(その他の財産)
(無尽又は頼母子に関する権利の価額)
207 無尽又は頼母子に関する権利の価額は、課税時期までの掛金総額によって評価する。