特許権の相続税評価の算式

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

ここでは、特許を他人に実施させている場合の特許権の価額を求める算式について説明します。

1.特許権の経済的価値

特許権の経済的価値は、特許を使った製品を製造、販売、使用すること、つまり特許を実施することで特許権者が得る利益の額によって定まります。利益を得る方法には、特許を他人に実施させて相当の対価を受け取る方法と、特許権者が自ら特許を実施する場合があります。

財産評価基本通達では、特許権を相続する場合や特許権を保有する会社の事業を承継する場合の評価の方法を定めています。特許を他人に実施させて相当の対価を受け取る場合は、将来受け取る対価を見積もり、現在の価値に割り引いた額で評価します。特許権者が自ら特許を実施する場合は、自らの営業権に含めて評価します。

2.特許を他人に実施させている場合の相続税評価の算式

特許を他人に実施させている場合、特許権の価額は、特許を実施させることで将来受け取ることが見込まれる補償金(収益)の額を、複利計算で現在の価値に割り引いた価額で評価します。具体的には、次のように計算します。

 A=第1年目の補償金年額×1年後の基準年利率による複利現価率
 B=第2年目の補償金年額×2年後の基準年利率による複利現価率
  …
 N=第n年目の補償金年額×n年後の基準年利率による複利現価率

上記のAからNまでの合計額を特許権の価額とします。

ここで、「第1年目」とは、課税時期の翌日から1年を経過する日までの期間をいいます。また、「1年後」はその1年を経過した日の翌日をいいます。たとえば、被相続人が2015年3月1日に亡くなったとすれば、課税時期は2015年3月1日となります。「第1年目」は、2015年3月2日から2016年3月1日までの期間をさします。このとき、「1年後」は、2016年3月2日をさします。

第n年目のnは課税時期から特許権の存続期間が終了するまでの年数(最長20年)とし、1年未満の端数は切り捨てます。

将来受ける補償金の額が確定していない場合は、課税時期前に取得した補償金のうち経常的な部分の金額をもとに、その特許権の需要・持続性等を参酌して推算した金額を将来受ける補償金の額とします。

基準年利率は、短期(3年未満)、中期(3年以上7年未満)および長期(7年以上)に区分し、各月ごとに国税庁が定め、四半期ごとに3か月分をまとめて発表しています。利付国債に係る複利利回りをもとに計算されます。複利現価率は、将来得られる金額を複利計算によって現在の価値に割り引くための係数です。

国税庁の公表資料から基準年利率と複利現価率を知るには、まず、基準年利率表で、課税時期(月ごと)と年数(n年)に対応する基準年利率を確認します。次に、複利表で、基準年利率(%)と年数(n年)に対応する複利現価率を確認します。

【財産評価基本通達】
(特許権の評価の算式)
141 前項の「複利現価の額の合計額」は、次の算式によって計算した金額とする。(平11課評2-12外改正)
(1) 第1年目の補償金年額×1年後の基準年利率による複利現価率=A
 第2年目の補償金年額×2年後の基準年利率による複利現価率=B
 第n年目の補償金年額×n年後の基準年利率による複利現価率=N
(2) A+B+…………+N=特許権の価額
 上の算式中の「第1年目」及び「1年後」とは、それぞれ、課税時期の翌日から1年を経過する日まで及びその1年を経過した日の翌日をいう。


【相続実務アカデミー】実務向け最新の相続知識を無料で!!無料会員登録はこちら
【採用情報 - RECRUIT -】チェスターで一緒に働きませんか?相続業務の魅力・給与・福利厚生ectはこちら
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る