被相続者が死亡した場合における相続(遺贈)を受けるとき、多くの場合、死亡保険の支払い請求も発生します。このお金については、当然ながら保険金受取人が指定されているわけですが、その「保険金受取人」についても、相続税法基本通達で定義されています。
保険会社との契約に加えて、敢えて相続税法でも規定されている「保険金受取人」とはどういうものなのか、そもそも、保険金が相続税法上どう扱われるものかもあわせて、詳しく解説していきましょう。
~目次~
1.相続税制基本通達での死亡保険金
死亡保険金は、残された家族に対する保障の意味もあることから、相続税法の中で大きな非課税枠が設けられています。
具体的に説明すると、すべての相続人が受け取る保険金の合計金額のうち、以下の数式で算出される非課税限度額を超える部分にだけ、課税されるのです。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
ただしこの非課税措置は、保険金の受取人が相続人である場合にのみ適用されますので、ご注意ください。
また、この非課税枠が適用されるのはあくまでも死亡保険金だけで、その他の保険金についてはすべて相続税の課税対象となります。
なお、民法上、死亡保険金の受け取りについては受取人固有の権利で、相続財産ではありません。そのため、仮に相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることは可能です(その場合、上記の非課税枠がなくなりますので、相続税を余分に納めなければいけないでしょう)。
2.相続税制基本通達における「保険金受取人」の意義
では、「保険金受取人」は、相続税基本通達にてどう定義されているのでしょうか。
(1)相続税制基本通達における「保険金受取人」
相続税基本通達第3条の11では、「保険金受取人」について、保険契約に基づいて保険事故(保険約款で定められた死亡にいたる事故)発生によって、保険金を受け取る権利を持っている人、と定義されています。つまり、保険の契約上の保険金受取人です。
(2)「保険金受取人」の変更
保険法上の話になりますが、死亡保険金の「保険金受取人」は、実際に保険事故が発生するまでであれば、遺言書に明記することで変更することは可能です。これは実際の保険契約よりも優先されます。なお、保険会社や証券番号などを明示し、受取人を変更する旨を記載しておく必要がありますのでご注意ください。
また、相続税基本通達第3条の12では、保険契約上の保険金受取人以外で、且つ遺言にも記載されていない人が保険金を受け取っても、やむを得ない事情があり、保険金を受け取る相当な理由がある場合は、その人を「保険金受取人」とする、という記載もあります。
(3)相続税制基本通達における「保険金受取人」の意義
つまり、相続税制基本通達における「保険金受取人」というのは、死亡保険金を受け取るべき正当な理由(保険契約、遺言書、その他)がある人であれば、どのような人でも受け取ることができるようになっているのです。
【参考】
国税庁 相続税基本通達3-11 (「保険金受取人」の意義)