ここでは、租鉱権の設定されている鉱山の鉱業権の相続税評価について説明します。まず、鉱業権と租鉱権とは何か、また両者の関係について説明し、その後、租鉱権の設定されている鉱山の鉱業権の評価方法を説明します。
~目次~
1.租鉱権とは
鉱業権とは、鉱業法第5条において、「登録を受けた一定の土地の区域(鉱区)において、登録を受けた鉱物及びこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を掘採し、及び取得する権利」と定められています。租鉱権は、鉱業法第6条において、「設定行為に基き、他人の鉱区において、鉱業権の目的となっている鉱物を掘採し、及び取得する権利」と定められています。
つまり、鉱業権は自ら所有する鉱区において鉱物を採取する権利であって、租鉱権は他人が所有する鉱区において鉱物を採取する権利とされています。
なお、租鉱権は存続期間が10年以内と定められていますが、期間満了時に5年以内の期間で延長することができます。
2.租鉱権の設定されている鉱山の鉱業権の相続税評価
一般的に、租鉱権者(租鉱権を持つ者)は、鉱山の所有者に租鉱料を支払って、採掘を行います。鉱山のうち租鉱権が設定されている部分の鉱業権の価額は、租鉱料収入に基づいて評価することになります。具体的には、租鉱料をもとに、鉱業権の評価方法に準じた方法で評価します。ここでは、鉱業権の評価方法に照らして、租鉱権の評価方法を説明します。
(1) 鉱山が操業している場合
鉱山が操業している場合の鉱業権の価額は、次の算式で示すように、将来得られる租鉱料収入を現在の価値に割り引いた価額で評価します。
A×n年に応ずる基準年利率による複利年金現価率
A:(その鉱山に係る平均租鉱料年額-その鉱山の所有者が負担すべき平均必要経費年額)×0.5
n年:埋蔵鉱量のうち経済的可採鉱量÷租鉱権者の1年間の採掘予定鉱量
Aの算式で0.5を掛けているのは、将来の不確実性や事故の危険性を考慮したものです。
(2) 休業している鉱山等で、近いうちに所得を得る見込みがある場合
鉱山が操業している場合の評価と同じ考え方ですが、所得が得られるようになるまでに投下する資本の額を調整します。
A×(m年とn年をあわせた年数の基準年利率による複利年金現価率-m年の基準年利率による複利年金現価率)-m年間に投下する資本の額を1年ごとに基準年利率による複利現価率で割り引いた額の合計
A、n年:(1)と同じ
m年:所得が得られるようになるまでの年数(1年未満の端数は切り捨て)
(3) (1)または(2)によって算出した価額が、その鉱山の固定資産・流動資産の合計額に満たない場合
将来の租鉱料収入に基づいて鉱業権を評価した場合、将来の不確実性や事故の危険性を考慮することで、その鉱山の固定資産・流動資産の額を下回ることがあります。この場合、鉱業権の価額は、その鉱山の固定資産・流動資産の合計額で評価します。
(4) 休業している鉱山等で、当面所得を得る見込みがない場合
鉱山が廃鉱になったと仮定した場合に、その鉱山の資産で他に転用できるものの価額の合計額で評価します。
(租鉱権の設定されている鉱山の鉱業権の評価)
157 鉱山の全部又は一部に租鉱権が設定されている場合におけるその租鉱権が設定されている部分の鉱山の鉱業権の価額は、その鉱山に係る平均租鉱料年額からその鉱山の所有者がその鉱山について負担すべき平均必要経費年額を控除した金額の100分の50に相当する金額をAとし、埋蔵鉱量のうち経済的可採鉱量を租鉱権者の1年間の採掘予定鉱量で除して得た年数をn年として、その租鉱権の設定されている鉱山が操業しているかどうか等の区分に応じ、それぞれ、前項の(1)から(4)までの定めを準用して評価する。
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