船籍のない船舶の所在と相続税評価

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相続税は、相続によって財産を取得した人に課せられる税金です。このとき、多くの場合は相続する財産の所在が国内なのか国外なのかについては関係なく課税されることになります。しかし、相続人が「制限納税義務者」だった場合、財産の所在が日本国外であれば課税対象外になるものがあるのです。つまり、場合によっては財産の所在によって相続税の課税額が変わってくることになります。

そのため、財産の所在については、以下のように相続税法第10条で詳細に規定されており、相続開始時の状況を当てはめて判断しなければいけません。

1.動産と不動産、不動産の上に存する権利 …… それら動産、不動産の所在
2.船舶 …… 船籍
3.航空機 …… 航空機を登録した機関の所在
4.鉱業権、租鉱権や採石権 …… 鉱区または採石場の所在
5.漁業権、入漁権 …… 漁場に最も近い沿岸の属する市町村や行政区画
6.預金、貯金、積金や寄託金 …… それらを受け入れた営業所、または事業所の所在
7.保険金、共済金 …… その保険や共済を契約した保険会社の本店、または事務所の所在
8.退職手当金、功労金 …… 支払った者の住所、または本店や事務所の所在
9.貸付金債権 …… その債務者の住所、または本店や事務所の所在
10.有価証券(社債、株式、出資など) …… 発行法人の本店や事務所の所在
11.集団投資信託、法人課税信託に関する権利 …… これらの信託の引き受けをした営業所、事務所などの所在
12.特許権、実用新案権、意匠権、商標権など …… その登録をした機関の所在
13.著作権、出版権、著作隣接権 …… 発行する営業所や事業所の所在
14.みなし贈与による利益 …… みなされる原因となった財産の種類ごとの所在
15.営業上や事業上の利益 …… 各営業所や事業所の所在
16.国債、地方債 …… 日本国内
17.外国や外国の地方公共団体が発行する公債 …… 発行国
18.上記に該当しない財産 …… 被相続人または贈与者の住所の所在

船籍のない船舶の所在と相続税評価

船籍というのは、船舶がどの国に所属しているのか(公海上を航行する船の上でどの国の法律が適用されるか)を示す船舶の国籍です。
ただ、相続される船舶については、実は船籍がない場合が少なくありません。その場合の判断の方法について、船舶の相続税評価と合わせて説明しましょう(ここに書かれている船舶というのは、人や物を載せて水の上を航行する船のうちでも、エンジンなどの駆動装置がついているものを指します)。

(1)船籍のない船舶の所在

相続した船舶が排水量20トン以上の公海上を航行する船だった場合は、船舶法の規定によって船籍が必ず付与されています。そのため、その船舶の所在については、相続税法第10条の規定に従うだけです。
しかし、漁船以外の20トン未満の船舶は船舶法の適用外となっていますので、船籍はありません。また、そもそも日本国内から出ることのない、国内の湖や河川でのみ航行している船舶も、船籍がない場合があります。
そのため、相続税基本通達10-1で「船籍のない船舶の所在」について規定されており、船籍のない船舶の所在は、相続開始時に「その船舶が存在した場所」によって判定することになっているのです。

(2)船舶の相続税評価

相続した船舶の相続税課税額を知るためには、その船舶の評価額を知る必要があります。それは財産評価基本通達136で、以下のように規定されています。

・実際に売買されている金額と、有識者による査定額を参考に決める
・上記で明確に決められない場合は、同種同型の船舶を新造した場合の価額から、相続した船舶が建造されてから経過している年数分の償却費や減価額を差し引いた金額とする

【参考】
国税庁 相続税法基本通達10-1 (船籍のない船舶の所在)
相続税法 第十条
国税庁 財産評価基本通達136 (船舶の評価)

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