著作隣接権は著作物を制作した人ではなく、著作物を伝達する俳優、歌手、演奏家などの実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められている権利です。それぞれに複製権、送信可能化権などの権利が認められています。
ここでは、著作隣接権の相続税評価について説明します。レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者は法人であるため、著作隣接権の相続が問題になるのは、実演家が亡くなった場合が多いと考えられます。
1.著作隣接権の具体的内容
著作隣接権については、著作権法に規定があり、具体的な権利の内容が次のように定められています。
・ 実演家が有する著作隣接権
録音権、録画権、放送権、有線放送権、送信可能化権、譲渡権、貸与権
・ レコード製作者が有する著作隣接権
複製権、送信可能化権、譲渡権、貸与権
・ 放送事業者が有する著作隣接権
複製権、再放送権、有線放送権、送信可能化権、テレビジョン放送の伝達権
・ 有線放送事業者が有する著作隣接権
複製権、放送権、再有線放送権、送信可能化権、有線テレビジョン放送の伝達権
著作隣接権は自動的に発生します。また、著作者の権利に影響を及ぼすものではありません。存続期間は、実演、レコードの発行、放送の翌年から起算して50年間とされています。
2.著作隣接権の相続税法上の評価
財産評価基本通達では、著作隣接権は著作権の評価に準じた方法で評価することとされています。ここでは、著作権の評価方法に照らして、著作隣接権の評価方法を説明します。
著作隣接権の価額は、著作者ごとまたは著作物ごとに次の算式によって計算した金額で評価します。
年平均印税収入の額×0.5×評価倍率
この算式の「年平均印税収入の額」は、課税時期の属する年の前年以前3年間の印税収入の年平均額とします。著作隣接権に関する印税は、原盤印税やアーティスト印税と呼ばれることがあります。
「評価倍率」は次のようにして算出します。課税時期後における各年の印税収入の額が「年平均印税収入の額」であると仮定して、著作物に関して精通している人の意見等をもとに印税収入期間を推算します。次いで、印税収入期間に応じた基準年利率による複利年金現価率を「評価倍率」とします。
上記のように、著作隣接権の価額は、著作者ごとまたは著作物ごとに将来の印税収入を見積もり、複利計算で現在の価値に割り引いて評価します。算式では0.5を掛けていますが、これは将来起こり得る不確定要素を考慮したものです。
実務上はこの印税収入期間を何年に設定するのかという部分は、大変難しいところになります。
【財産評価基本通達】
(著作隣接権の評価)
154-2 著作隣接権の価額は、148≪著作権の評価≫の定めを準用して評価する。(昭47直資3-16追加)(著作権の評価)
148 著作権の価額は、著作者の別に一括して次の算式によって計算した金額によって評価する。ただし、個々の著作物に係る著作権について評価する場合には、その著作権ごとに次の算式によって計算した金額によって評価する。(昭47直資3-16・平11課評2-12外改正)
年平均印税収入の額×0.5×評価倍率
上の算式中の「年平均印税収入の額」等は、次による。
(1) 年平均印税収入の額
課税時期の属する年の前年以前3年間の印税収入の額の年平均額とする。ただし、個々の著作物に係る著作権について評価する場合には、その著作物に係る課税時期の属する年の前年以前3年間の印税収入の額の年平均額とする。
(2) 評価倍率
課税時期後における各年の印税収入の額が「年平均印税収入の額」であるものとして、著作物に関し精通している者の意見等を基として推算したその印税収入期間に応ずる基準年利率による複利年金現価率とする。