貸し付けられている雑種地とは、その雑種地自体に発生している賃借権、地上権、区分地上権、区分地上権に準ずる地役権などの権利を所有している雑種地のことを指します。むろん「地上権と区分地上権」などの複数の権利が存在するケースもあります。この場合は雑種地に発生する権利により、その雑種地を使用する際に何らかの制限が発生することから、その制限に関わる分が相続税等の税制上では優遇措置が取られ、評価に反映されます。
貸し付けられている雑種地の評価
税制上で貸し付けられている雑種地の評価方法は、次の通り発生している権利によって異なるために、まず全体の概要を述べ、個々の事例については別項で解説します。
(1) 賃借権の目的となっている雑種地の場合
税制上で賃借権の目的となっている雑種地の評価は、まず「財産評価総則基本通達第2章82:雑種地の評価」から「財産評価総則基本通達第2章84:鉄軌道用地の評価」に至るまでの各方式に基づく内容にて価額算出を行います。その上で、「財産評価総則基本通達第2章87:賃借権の評価」によって評価した賃借権の評価価額を控除した後の残りの価額を、税制上での賃借権の目的となって貸し付けられている雑種地の評価価額とします。
(2)賃借権の目的となっている雑種地の場合の例外1
ただし、(1)で評価した賃借権の価額が、「賃借権の不動産登記がされている」場合や「賃借権設定によりその対価としての、例えば権利金等の一時金が授受される」場合、「堅固な構築物(判例『平成18年10月10日非公開採決F0-3-153』では『その建築物の建設もしくは撤去に相当の期間を要する構築物』と定義されています)の所有を目的とする」ケースに該当して、地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権の価額よりも安い額となる場合には、(1)において評価した価額に賃借権の残存期間に応じて次の割合を掛け算した価額を雑種地の評価価額とします。
・残存期間が5年以下のもの:95%
・残存期間が5年を超え10年以下のもの:90%
・残存期間が10年を超え15年以下のもの:85%
・残存期間が15年を超えるもの:80%
(3)賃借権の目的となっている雑種地の場合の例外2
また(2)のケースに該当せず、なおかつ(1)で評価した賃借権の価額が地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権の価額よりも安い額となる場合には、(1)において評価した価額に賃借権の残存期間に応じて次の割合を掛け算した価額を雑種地の評価価額とします。
・残存期間が5年以下のもの:97.5%
・残存期間が5年を超え10年以下のもの:95%
・残存期間が10年を超え15年以下のもの:92.5%
・残存期間が15年を超えるもの:90%
(4) 地上権の目的となっている雑種地の場合
税制上で賃借権の目的となっている雑種地の評価は、まず「財産評価総則基本通達第2章82:雑種地の評価」から「財産評価総則基本通達第2章84:鉄軌道用地の評価」に至るまでの各方式に基づく内容にて価額算出を行います。その上で、「相続税法第23条:地上権及び永小作権の評価」または「地価税法代24条:地上権及び永小作権の評価」によって評価した地上権の評価価額を控除した後の残りの価額を、税制上での地上権の目的となって貸し付けられている雑種地の評価価額とします。
(5) 区分地上権の目的となっている雑種地の場合
税制上で区分地上権の目的となっている雑種地の評価は、まず「財産評価総則基本通達第2章82:雑種地の評価」から「財産評価総則基本通達第2章84:鉄軌道用地の評価」に至るまでの各方式に基づく内容にて価額算出を行います。その上で、「財産評価総則基本通達第2章87-2:区分地上権の評価」によって評価した区分地上権の評価価額を控除した後の残りの価額を、税制上での区分地上権の目的となって貸し付けられている雑種地の評価価額とします。
(6)区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である雑種地の場合
税制上で区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である雑種地の評価は、まず「財産評価総則基本通達第2章82:雑種地の評価」から「財産評価総則基本通達第2章84:鉄軌道用地の評価」に至るまでの各方式に基づく内容にて価額算出を行います。その上で、その上で、「財産評価総則基本通達第2章87-3:区分地上権に準ずる地役権の評価によって評価した区分地上権に準ずる地役権の価額の評価価額を控除した後の残りの価額を、税制上での区分地上権に準ずる地役権の価額の目的となって貸し付けられている雑種地の評価価額とします。
造成を行っている場合の貸し付けられている雑種地の評価
ただし、「賃借権の目的となっている雑種地」及び「地上権の目的となっている雑種地」において、賃借人もしくは地上権を有する者が造成を行っている場合には、その造成が行われていないという前提でまず「財産評価総則基本通達第2章82:雑種地の評価」を行い、その上でその評価価額から「財産評価総則基本通達第2章87:賃借権の評価」により評価した賃借権の価額、もしくは「相続税法第23条:地上権及び永小作権の評価」または「地価税法代24条:地上権及び永小作権の評価」によって評価した地上権の評価価額を控除した後の残りの価額を、税制上での地上権の目的となって貸し付けられている雑種地の評価価額とします。
【財産評価総則基本通達第2章86】(貸し付けられている雑種地の評価)
86 賃借権、地上権等の目的となっている雑種地の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(昭41直資3-19・平3課評2-4外・平6課評2-2外改正)
(1) 賃借権の目的となっている雑種地の価額は、原則として、82≪雑種地の評価≫から84≪鉄軌道用地の評価≫までの定めにより評価した雑種地の価額(以下この節において「自用地としての価額」という。)から、87≪賃借権の評価≫の定めにより評価したその賃借権の価額を控除した金額によって評価する。
ただし、その賃借権の価額が、次に掲げる賃借権の区分に従いそれぞれ次に掲げる金額を下回る場合には、その雑種地の自用地としての価額から次に掲げる金額を控除した金額によって評価する。
イ 地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権(例えば、賃借権の登記がされているもの、設定の対価として権利金その他の一時金の授受のあるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなどがこれに該当する。)
その雑種地の自用地としての価額に、その賃借権の残存期間に応じ次に掲げる割合を乗じて計算した金額
(イ) 残存期間が5年以下のもの 100分の5
(ロ) 残存期間が5年を超え10年以下のもの 100分の10
(ハ) 残存期間が10年を超え15年以下のもの 100分の15
(ニ) 残存期間が15年を超えるもの 100分の20
ロ イに該当する賃借権以外の賃借権
その雑種地の自用地としての価額に、その賃借権の残存期間に応じイに掲げる割合の2分の1に相当する割合を乗じて計算した金額
(2) 地上権の目的となっている雑種地の価額は、その雑種地の自用地としての価額から相続税法第23条≪地上権及び永小作権の評価≫又は地価税法第24条≪地上権及び永小作権の評価≫の規定により評価したその地上権の価額を控除した金額によって評価する。
(3) 区分地上権の目的となっている雑種地の価額は、その雑種地の自用地としての価額から87-2≪区分地上権の評価≫の定めにより評価したその区分地上権の価額を控除した金額によって評価する。
(4) 区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である雑種地の価額は、その雑種地の自用地としての価額から87-3≪区分地上権に準ずる地役権の評価≫の定めにより評価したその区分地上権に準ずる地役権の価額を控除した金額によって評価する。
(注) 上記(1)又(2)において、賃借人又は地上権者がその雑種地の造成を行っている場合には、その造成が行われていないものとして82≪雑種地の評価≫の定めにより評価した価額から、その価額を基として87≪賃借権の評価≫の定めに準じて評価したその賃借権の価額又は相続税法第23条≪地上権及び永小作権の評価≫若しくは地価税法第24条≪地上権及び永小作権の評価≫の規定により評価した地上権の価額を控除した金額によって評価する。【財産評価総則基本通達第2章87-2】(区分地上権の評価)
雑種地に係る区分地上権の価額は、27-4≪区分地上権の評価≫の定めを準用して評価する。(平3課評2-4外追加、平6課評2-2外改正)【財産評価総則基本通達第2章87-3】(区分地上権に準ずる地役権の評価)
雑種地に係る区分地上権に準ずる地役権の価額は、その区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である雑種地の自用地としての価額を基とし、27-5≪区分地上権に準ずる地役権の評価≫の定めを準用して評価する。(平3課評2-4外追加、平6課評2-2外改正)【相続税法第3章第23条】(地上権及び永小作権の評価)
地上権(借地借家法(平成3年法律第90号)に規定する借地権又は民法第269条の2第1項(地下又は空間を目的とする地上権)の地上権に該当するものを除く。以下同じ。)及び永小作権の価額は、その残存期間に応じ、その目的となつている土地のこれらの権利を取得した時におけるこれらの権利が設定されていない場合の時価に、次に定める割合を乗じて算出した金額による。
・残存期間が10年以下のもの 100分の5
・残存期間が10年を超え15年以下のもの 100分の10
・残存期間が15年を超え20年以下のもの 100分の20
・残存期間が20年を超え25年以下のもの 100分の30
・残存期間が25年を超え30年以下のもの及び地上権で存続期間の定めのないもの 100分の40
・残存期間が30年を超え35年以下のもの 100分の50
・残存期間が35年を超え40年以下のもの 100分の60
・残存期間が40年を超え45年以下のもの 100分の70
・残存期間が45年を超え50年以下のもの 100分の80
・残存期間が50年を超えるもの 100分の90