貸宅地の相続税評価

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貸宅地の相続税評価

貸宅地とは、貸出す目的で所有権を持っている宅地のことを指します。税法上では自分が住む目的で所有する自用地と比較すると、貸宅地として貸し出した後に発生した借地権や定期借地権、区分地上権などの権利の取扱いが異なります。また同じ貸宅地でも、発生した権利により税制上の取扱が異なります。

貸宅地の評価

税制上での貸宅地の評価は、財産評価総則基本通達の各項目に記載されている方法により、まず貸借地を「自用地とみなした場合」として評価により価額算出を行います。次に、貸借地に発生する権利を「財産評価総則基本通達第1章25(借地権の評価)」により借地権として評価して価額を算出します。この上で、「貸借地を自用地とみなした場合の価額」から「借地権の価額」を控除した価額を、貸借地の評価価額とします。
ただし日本国内には「長年の慣習から貸借地においての借地権の取引を行わない」という地域もあり、そのような地域では「元々借地権分の金額計算を行っていない」というケースもあります。税制上この場合は、「借地権の取引をおこなっているものとみなして一般的な借地権の評価を行う」ことで借地権の価額を計算した上で、その20%相当額を「貸借地を自用地とみなした場合の価額」から控除した額を貸借地の評価価額とします。
また、その地域を管轄する税務局長が、その地域の権利値割合(借地権の目的となっている宅地を評価した価格の、貸借地を自用地とみなした価格に対する割合)を決定している場合には、「貸借地を自用地とみなした場合の価格」に「貸借地割合」を掛け算した価額を、貸借地の評価価額とします。この権利値割合は国税庁が公表しています。

定期借地権が存在する場合の貸宅地の評価

定期借地権が存在する場合の貸宅地の評価は、「貸宅地を自用地とみなした場合の価額」から「財産評価総則基本通達第2章27-2(定期借地権等の評価)」によって評価した価額を控除した金額を、定期借地権が存在する場合の貸宅地の評価価額とします。
ただし「財産評価総則基本通達第2章27-2(定期借地権等の評価)」によって評価した価額が、定期借地権の残りの年数に応じて定められた一定の割合を「貸宅地を自用地とみなした場合の価額」に掛け算して得られた価額を下回る場合には、「貸宅地を自用地とみなした場合の価額」から「貸宅地を自用地とみなした場合の価格」から「定期借地権の残りの年数に応じて定められた一定の割合」を掛け算して得られた額を控除して、定期借地権が存在する場合の貸宅地の評価価額とします。
この場合の「定期借地権の残りの年数に応じて定められた一定の割合」は次のとおりです。
・ 定地借地権の残りが5年以下のもの:5%
・ 定地借地権の残りが5年を超え10年以下のもの:10%
・ 定地借地権の残りが10年を超え15年以下のもの 15%
・ 定地借地権の残りが15年を超えるもの 20%

地上権の目的となっている貸宅地の評価

税制上で地上権の目的となっている貸宅地の評価は、「貸宅地を自用地とみなした場合の価額」から「相続税法第3章第23条」(地上権及び永小作権の評価)、もしくは地価税法第24条(地上権及び永小作権の評価)にて評価された地上権の価額を控除した価額を、地上権の目的となっている貸宅地の評価価額とします。

区分地上権の目的となっている貸宅地の評価

税制上で区分地上権の目的となっている宅地の評価は、「貸宅地の自用地とみなした場合の価額」から「財産評価総則基本通達第2章27-4」(区分地上権の評価)で定められた評価方法により評価された区分地上権の価額を控除した価額により貸宅地の評価価額とします。

区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の評価

税制上で区分地上権に順ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の評価は、「貸宅地の自用地とみなした場合の価額」から「財産評価総則基本通達第2章27-5」(区分地上権の評価)で定められた評価方法により評価された地役権の価額を控除した価額により貸宅地の評価価額とします。

【財産評価総則基本通達第2章25】(貸宅地の評価)
宅地の上に存する権利の目的となっている宅地の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(昭41直資3-19・平3課評2-4外・平6課評2-2外・平14課評2-2外・平16課評2-7外・平17課評2-11外改正)
(1) 借地権の目的となっている宅地の価額は、11((評価の方式))から22-3((大規模工場用地の路線価及び倍率))まで、24((私道の用に供されている宅地の評価))、24-2((土地区画整理事業施行中の宅地の評価))、24-4((広大地の評価))及び24-6((セットバックを必要とする宅地の評価))から24-8((文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価))までの定めにより評価したその宅地の価額(以下この節において「自用地としての価額」という。)から27((借地権の評価))の定めにより評価したその借地権の価額(同項のただし書の定めに該当するときは、同項に定める借地権割合を100分の20として計算した価額とする。25-3((土地の上に存する権利が競合する場合の宅地の評価))において27-6((土地の上に存する権利が競合する場合の借地権等の評価))の定めにより借地権の価額を計算する場合において同じ。)を控除した金額によって評価する。
 ただし、借地権の目的となっている宅地の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した価額の宅地の自用地としての価額に対する割合(以下「貸宅地割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長が貸宅地割合を定めている地域においては、その宅地の自用地としての価額にその貸宅地割合を乗じて計算した金額によって評価する。
(2) 定期借地権等の目的となっている宅地の価額は、原則として、その宅地の自用地としての価額から、27-2≪定期借地権等の評価≫の定めにより評価したその定期借地権等の価額を控除した金額によって評価する。
 ただし、同項の定めにより評価した定期借地権等の価額が、その宅地の自用地としての価額に次に掲げる定期借地権等の残存期間に応じる割合を乗じて計算した金額を下回る場合には、その宅地の自用地としての価額からその価額に次に掲げる割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する。
イ 残存期間が5年以下のもの 100分の5
ロ 残存期間が5年を超え10年以下のもの 100分の10
ハ 残存期間が10年を超え15年以下のもの 100分の15
ニ 残存期間が15年を超えるもの 100分の20
(3) 地上権の目的となっている宅地の価額は、その宅地の自用地としての価額から相続税法第23条≪地上権及び永小作権の評価≫又は地価税法第24条≪地上権及び永小作権の評価≫の規定により評価したその地上権の価額を控除した金額によって評価する。
(4) 区分地上権の目的となっている宅地の価額は、その宅地の自用地としての価額から27-4≪区分地上権の評価≫の定めにより評価したその区分地上権の価額を控除した金額によって評価する。
(5) 区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の価額は、その宅地の自用地としての価額から27-5≪区分地上権に準ずる地役権の評価≫の定めにより評価したその区分地上権に準ずる地役権の価額を控除した金額によって評価する。

【財産評価総則基本通達第2章27】(借地権の評価)
借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に、当該価額に対する借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した借地権の価額の割合(以下「借地権割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する。ただし、借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない。(昭41直資3-19・平3課評2-4外改正)

【財産評価総則基本通達第2章27-2】(定期借地権等の評価)
定期借地権等の価額は、原則として、課税時期において借地権者に帰属する経済的利益及びその存続期間を基として評定した価額によって評価する。
 ただし、課税上弊害がない限り、その定期借地権等の目的となっている宅地の課税時期における自用地としての価額に、次の算式により計算した数値を乗じて計算した金額によって評価する。(平6課評2-2外追加、平11課評2-12外改正)

【相続税法第3章第23条】(地上権及び永小作権の評価)
地上権(借地借家法(平成3年法律第90号)に規定する借地権又は民法第269条の2第1項(地下又は空間を目的とする地上権)の地上権に該当するものを除く。以下同じ。)及び永小作権の価額は、その残存期間に応じ、その目的となつている土地のこれらの権利を取得した時におけるこれらの権利が設定されていない場合の時価に、次に定める割合を乗じて算出した金額による。
・残存期間が10年以下のもの 100分の5
・残存期間が10年を超え15年以下のもの 100分の10
・残存期間が15年を超え20年以下のもの 100分の20
・残存期間が20年を超え25年以下のもの 100分の30
・残存期間が25年を超え30年以下のもの及び地上権で存続期間の定めのないもの 100分の40
・残存期間が30年を超え35年以下のもの 100分の50
・残存期間が35年を超え40年以下のもの 100分の60
・残存期間が40年を超え45年以下のもの 100分の70
・残存期間が45年を超え50年以下のもの 100分の80
・残存期間が50年を超えるもの 100分の90

【財産評価総則基本通達第2章27-4】(区分地上権の評価)
区分地上権の価額は、その区分地上権の目的となっている宅地の自用地としての価額に、その区分地上権の設定契約の内容に応じた土地利用制限率を基とした割合(以下「区分地上権の割合」という。)を乗じて計算した金額によって評価する。
 この場合において、地下鉄等のずい道の所有を目的として設定した区分地上権を評価するときにおける区分地上権の割合は、100分の30とすることができるものとする。(平3課評2-4外追加、平6課評2-2外・平12課評2-4外改正)
(注)
1 「土地利用制限率」とは、公共用地の取得に伴う損失補償基準細則(昭和38年3月7日用地対策連絡協議会理事会決定)別記2≪土地利用制限率算定要領≫に定める土地利用制限率をいう。以下同じ。
2 区分地上権が1画地の宅地の一部分に設定されているときは、「その区分地上権の目的となっている宅地の自用地としての価額」は、1画地の宅地の自用地としての価額のうち、その区分地上権が設定されている部分の地積に対応する価額となることに留意する。

【財産評価総則基本通達第2章27-5】(区分地上権に準ずる地役権の評価)
区分地上権に準ずる地役権の価額は、その区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の自用地としての価額に、その区分地上権に準ずる地役権の設定契約の内容に応じた土地利用制限率を基とした割合(以下「区分地上権に準ずる地役権の割合」という。)を乗じて計算した金額によって評価する。
 この場合において、区分地上権に準ずる地役権の割合は、次に掲げるその承役地に係る制限の内容の区分に従い、それぞれ次に掲げる割合とすることができるものとする。(平3課評2-4外追加、平6課評2-2外・平12課評2-4外改正)
(1) 家屋の建築が全くできない場合 100分の50又はその区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合にその承役地に適用される借地権割合のいずれか高い割合
(2) 家屋の構造、用途等に制限を受ける場合 100分の30

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