貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲

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貸家建付地とは、例えば賃貸のアパートやコーポ、マンションなどが建てられている土地のことを指し、建物は「貸家」、土地は「貸家建付地」として評価を行います。
このような場合、税制上の原則では「相続等の税の発生した時期に、実際に賃貸されている部分の床面積の合計に基づいて評価価額を算出する。」ことになります。
しかしながら実際運用を行う上で次のような例があります。
(1)学生向けの貸家で、通常は一年を通して同程度の入居者が存在するが、毎年3月の一時期に限って学生が卒業するために著しく入居者が減るという場合。
(2)企業が契約社員用の社宅として使用されている貸家で、企業が定める「契約満了の時期」の後に著しく入居者が減るが、その後に新しい契約社員が入居するために、周期的にやってくる契約社員の契約満了の時期以外はほぼ一定数の入居者を確保している場合。
このようなケースにおいて、通常は一定数の入居者を確保しているものの、ある一時期だけ「慣習とされている理由で」入居者が減る状況を、貸家建付地等の一時的な空室と称します。
偶然にこのような時期に相続等で税が発生した場合に、原則的な方法で税制上の評価を行った場合に、貸家建付地の税制上での評価価値と大きな齟齬が生じてしまうことになります。

貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲

税制上の原則では「相続等の税の発生した時期に、実際に賃貸されている部分の床面積の合計に基づいて評価価額を算出する。」となっている借家建付地等の評価ですが、国税庁の見解では「ある特定時期のみに空き室が多くなる」貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲についても見解を出しています。
「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」と国税庁で評価する条件としては次のとおりです。
(1)各独立部分について税が発生した時期より前に継続的に賃貸されてきたものか。
(2)賃借人の退去後に、速やかに新たな賃借人の募集が行われているか。
(3)空室であった期間、賃借以外の他の用途に使われていないか。
(4)空室期間が、税が発生した時期前後の一時的な期間だったか。
(5)課税時期後の賃貸が一時的なものではないか。
これらを総合的に判断した上で、国税庁にて貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲に該当するかどうかを判断します。

【財産評価総則基本通達第2章26】(貸家建付地の評価)
26 貸家(94≪借家権の評価≫に定める借家権の目的となっている家屋をいう。以下同じ。)の敷地の用に供されている宅地(以下「貸家建付地」という。)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する。(平3課評2-4外・平11課評2-12外改正)

 この算式における「借地権割合」及び「賃貸割合」 は、それぞれ次による。
(1) 「借地権割合」は、27≪借地権の評価≫の定めによるその宅地に係る借地権割合(同項のただし書に定める地域にある宅地については100分の20とする。次項において同じ。)による。
(2) 「賃貸割合」は、その貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいう。以下同じ。)がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合による。

(注)
1 上記算式の「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいう。したがって、例えば、ふすま、障子又はベニヤ板等の堅固でないものによって仕切られている部分及び階層で区分されていても、独立した出入口を有しない部分は「各独立部分」には該当しない。
 なお、外部に接する出入口を有しない部分であっても、共同で使用すべき廊下、階段、エレベーター等の共用部分のみを通って外部と出入りすることができる構造となっているものは、上記の「独立した出入口を有するもの」に該当する。
2 上記算式の「賃貸されている各独立部分」には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない。


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