2015年の相続税の改定によって、相続税が課税される人が増えるといわれています。それを受けて、賃貸アパート建築の提案をする事例が多くなっています。節税対策をうたっている提案ですが、賃貸アパートの建築には多額の資金が必要になります。本当に節税対策になるのでしょうか。デメリットはないのでしょうか。
1.賃貸することで評価額が引き下げられる
建物を賃貸することで、土地と建物の評価額を引き下げることができます。
土地の上に賃貸アパートを建築すると、その土地には借地権と借家権が発生します。借地権と借家権によって、土地利用が制約されるため、評価するときは「貸家建付地」として、借地権と借家権に相当する割合を差し引きます。場所によって値は上下するものの、おおむね2割程度評価が引き下げられます。
建物は固定資産税評価額で評価しますが、固定資産税評価額は建築費の5割から7割程度とされています。さらに、貸家については借家権相当額(3割)を差し引くので、合わせると評価額はおよそ半額かそれ以下になります。
さらに、小規模宅地等の特例を適用することで、面積が200㎡までの部分については評価額を5割減額できます。ただし、賃貸事業を継続するなど一定の条件があります。また、自宅がある場合は、自宅に小規模宅地等の特例を適用するほうが有利になる可能性があります。
2. 借入金は相続財産から控除できる
手元に資金が十分にあれば、その資金を活用してアパートを建築することができますが、土地だけを保有していて、手元に資金がない場合は、借入金で建築することになります。借入金は負債として相続財産から差し引くことができます。
3.デメリットにも留意を
手元の土地と資金を有効に活用して、さらに相続税の節税にもなる賃貸アパート建築ですが、デメリットもあります。
賃貸アパートは建てたら建てっぱなしにするわけにはいかず、メンテナンスが必要になります。自分でメンテナンスするにはノウハウが必要で、管理業者に委託すれば費用がかかります。また、賃貸アパートが常に満室になるとは限りません。立地条件が悪いなどの要因で空室が多い場合は、家賃収入が得られません。資金が回収できないだけでなく、借入金がある場合は返済もままならない状態に陥ります。
資金不足になって賃貸アパートを売却しなければならなくなっても、土地にアパートが建っている場合は、売却しづらい場合があります。立地条件が悪く、空室が多い場合はなおさらです。売却できても、想定よりも低い価格になることも考えられます。
相続対策で賃貸アパートを建てた場合、財産の評価額が下がって相続税の節税にはなりますが、後々デメリットを被るのは賃貸アパートを相続した人です。子や孫のために良かれと思った対策が裏目に出ることもあるので、個別のケースに照らした見極めが必要です。
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