ここでは、同族会社が新株を発行した場合の相続税法上の取り扱いと、新株の引受権の数の算定方法について説明します。
1.同族会社の新株発行に関する規定
法人税法に規定する同族会社が新株を発行する場合、その新株の引受権(募集株式引受権)が株主の親族等に与えられ、その親族等が新株を取得したときは、原則として親族の間での贈与によって取得したものとされます。
「新株を発行する」とは、同族会社が保有する自社の株式を譲渡する場合も含みます。「親族等」とは、親族のほか、内縁関係にある者または使用人等も含まれ、さらにその者の親族で生計を一にする者も含みます。
ただし、その募集株式引受権が給与所得または退職所得として所得税の課税対象となる場合は、この規定は適用されません。また、同族会社である合同会社および合資会社の増資については、この規定に準じることとされています。
2.募集株式引受権の数の算定方法
上記の規定において、誰からどれだけの数の募集株式引受権の贈与があったものとするかは、次の算式により計算します。この場合、その者の親族等が2人以上のときは、1人ごとに計算するものとします。
その者の親族から贈与により取得したものとする募集株式引受権数=A×C/B
(注) 算式中の符号は、次のとおりです。
A:他の株主と同じ条件により与えられる募集株式引受権の数を超えて与えられた者の、その超える部分の募集株式引受権の数
「他の株主と同じ条件により与えられる募集株式引受権の数」とは、発行する新株が増資する前の議決権割合によって割り当てられる場合の割り当て株式数をいいます。ある株主がこの数を上回って新株を引き受けたとき、その上回った数がAの値になります。
B:当該法人の株主が他の株主と同じ条件により与えられる募集株式引受権のうち、その者の取得した新株の数が、当該与えられる募集株式引受権の数に満たない数の合計
ある株主が他の株主と同じ条件により与えられる募集株式引受権の数を超えて新株を引き受けると、他の株主はこの数を下回る数の新株を引き受けることになります。この下回った数の合計がBの値になります。
C:Bの募集株式引受権の総数のうち、Aに掲げる者の親族等(親族等が2人以上あるときは、当該親族等の1人ごと)の占めているものの数
Bの値のうち、Aの対象となった株主の親族である株主の分を株主1人ごとに求めた値がCになります。
その者の親族等から贈与により取得したものとする募集株式引受権数の計算は、以上のA、B、Cの値を数式に代入して行います。その者の親族等が2人以上のときは1人ごとに計算するので、誰からどれだけの数の募集株式引受権の贈与があったものとするかが計算できます。