被相続人が貸付直前まで耕作していた農地が、電力会社の行う送電線の仮鉄塔敷地として貸付けられ、その期間中に相続が開始し、当該農地を相続した相続人が貸付終了後に当該農地で農業を承継するとした場合に、当該農地は、相続税の納税猶予特例の適用を受けることができるのでしょうか。以下で、解説します。
贈与税(相続税)の納税猶予特例について
本題に入る前に、贈与税(相続税)の納税猶予特例について解説します。
この特例は、農業を営む譲渡人(被相続人)から、推定相続人又は相続人に対する農地の贈与(相続)があり、農地を取得した譲受人又は相続人が取得した農地で農業を営む場合には、当該農地の相続税評価額から農業投資額を控除した価額に対応する贈与税(相続税)の納税が猶予されるというものです。
鉄塔の建替え工事のため仮鉄塔の敷地として一時使用されている土地について
ある照会者から、以下のような質問が国税庁に対してなされました。
それは、贈与者(被相続人)が貸付の直前まで自ら耕作していた農地が、電力会社の送電線の鉄塔の建替え工事のための仮鉄塔敷地として1年6か月の契約で貸付けられ、その契約期間中に、贈与又は相続があった場合、当該農地については、贈与税(相続税)の納税猶予特例を適用することができるのかどうかというものです。
これに対して、国税庁では、以下のように回答しております。
まず、農地の貸付けが、国又は地方公共団体等が行う事業のために一時的に行われるものであって、貸付期間が冬期間や連作障害を防ぐための休耕期間に該当するなど、貸付かが農業上の利用に害を及ぼさないと認められる場合には、当該貸付け農地について、本特例の適用があります。
ただし、以下に該当する場合には、本特例の適用はありません。
(1) 当該農地を国又は地方公共団体等に貸付けることについて、公共性、緊急性、非
代替性が認められない場合
(2) 当該農地を国又は地方公共団体等に貸付ける期間が必要最小限の期間でない場合、
又は、必要最小限の期間であっても、その期間が1年を超える場合
(3) 国又は地方公共団体等への貸付け終了後、その土地が従前の農地と同等以上の利
用価値を有する農地として復元されることが確実であると認められない場合
この結果、上記の例では、電力会社の行う送電線の鉄塔の建替え工事に係る貸付なので、農地の貸付けについて公共性及び緊急性が認められ(1)の要件には該当しないものの、貸付期間が1年6ヵ月であるため(2)の要件に該当するので、本特例の適用はありません。
ちなみに、贈与税(相続税)の納税猶予特例の適用を受けている農地が、例のように電力会社の行う送電線の仮鉄塔敷地として1年超の期間貸付られた場合には、上記によって、
本特例の適用は終了します。
しかし、当該貸付が、租税特別措置法第70条の4第18項等で規定する一時的道路用地の貸付特例の適用を受けたものであるときは、例外的に、本特例の適用は継続します。
この質問及び回答が、国税庁の質疑応答「鉄塔の建替え工事のため仮鉄塔の敷地として一時使用されている土地」となります。