財産評価基本通達では、あらゆる財産の相続や贈与に対応できるように、さまざまな種類の財産の評価方法を定めています。鉱業権や租鉱権についても、具体的な評価方法が定められています。
~目次~
1.鉱業権及び租鉱権とは
鉱業権は自己の土地において鉱物を採掘する権利をいい、租鉱権は契約の定めるところによって他人の土地で鉱物を採掘する権利をいいます。
鉱業権と租鉱権は、権利そのものを単独で評価するのではなく、鉱山に投下された財産(流動資産、固定資産)も含めて評価することとされています。
2.鉱業権の相続税評価
鉱業権の評価は、鉱山が操業しているかどうかによって、いくつかの方法が定められています。
(1) 鉱山が操業している場合
鉱山が操業している場合の鉱業権の価額は、鉱物を採取することで将来得られる所得を見積もり、現在の価値に割り引いた価額で評価します。具体的には、次の算式で計算します。
A×n年に応ずる基準年利率による複利年金現価率
A:平均所得=(平常の営業状態において、課税時期以後のn年間に毎年実現することが予想される1年間の純益+支払利子+償却額)×0.5-企業者報酬の額
n年:可採年数=埋蔵鉱量のうち経済的可採鉱量÷1年間の採掘予定鉱量
平均所得の算式の中で0.5を掛けていますが、これは将来の不確実性や危険の割合を考慮したものです。鉱物の採掘は必ず見込みどおりにできるとは限らず、採掘量が予想を大幅に下回ることも考えられます。また、出水、落盤、爆発などの事故の危険性もあります。
(2) 休業している鉱山等で近いうちに所得を得る見込みがある場合
鉱山が操業している場合の評価と考え方は同じですが、所得が得られるようになるまでのm年間に投下する資本の額を差し引いて評価します。休業している鉱山等には、操業しているものの所得がない鉱山や、探鉱は終了しているがまだ採鉱していない鉱山も含みます。
A×(m年にn年を加えた年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率-m年に応ずる基準年利率による複利年金現価率)-m年間に投下する各年の資本の額の基準年利率による複利現価の額の合計額
Aおよびn年:(1)と同じ
m年:課税時期から休業している鉱山等が所得を得ることができるようになるまでの年数(1年未満の端数は切り捨て)
(3) (1)または(2)によって算出した鉱業権の価額が、その鉱山の固定資産および流動資産の合計額に満たない場合
この場合、鉱業権の価額は、その鉱山の固定資産と流動資産の合計額で評価します。将来の所得に基づいて計算した鉱業権の価額がいくら低くても、鉱業権のある鉱山には少なくとも固定資産と流動資産の価値だけはあると考えられるためです。
(4) 休業している鉱山等で近いうちに所得を得る見込みがない場合
その鉱山の資産のうち、鉱山が廃鉱となった場合に他に転用できるものの価額の合計額で評価します。
(5) 探鉱中の鉱山の鉱業権
探鉱中の鉱山は、将来の所得を見込むことができないため、その鉱山に投下された費用現価の100分の70に相当する価額によって評価します。
3.租鉱権の相続税評価
租鉱権の価額は、上記の鉱業権の評価方法の(1)から(4)に準じて評価します。ただし、「可採年数」は「租鉱権の存続期間」に置き換えます。
(鉱業権の評価)
156 鉱業権(次項の定めにより評価する鉱山の鉱業権を除く。)の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(平11課評2-12外改正)
(1) 操業している鉱山の鉱業権
課税時期において、操業している鉱山の鉱業権((2)に該当するものを除く。)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する。
A×n年に応ずる基準年利率による複利年金現価率=鉱業権の価額
上の算式中の「A」及び「n年」は、次による。
A=平均所得=(平常の営業状態において、課税時期後n年間毎年実現を予想される1年間の純益+支払利子+償却額)×0.5-企業者報酬の額
n年=可採年数=埋蔵鉱量のうち経済的可採鉱量÷1年間の採掘予定鉱量
(2) 休業している鉱山等で近く所得を得る見込みのものの鉱業権
休業している鉱山、操業はしているが所得を得ていない鉱山又は探鉱は終了しているが採鉱に着手していない鉱山(以下「休業している鉱山等」という。)で、近い将来に所得を得る見込みがあるものの鉱業権の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する。
A×(m年にn年を加えた年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率-m年に応ずる基準年利率による複利年金現価率)-m年間に投下する各年の資本の額の基準年利率による複利現価の額の合計額=鉱業権の価額
上の算式中の「A」、「n年」及び「m年」は、次による。
A及びn年=(1)に準ずる。
m年=休業している鉱山等の課税時期から所得を得るに至ると認められる年までの年数(その年数に1年未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。)
(3) (1)又は(2)の鉱山の鉱業権の評価の特例
(1)又は(2)により算出した鉱山の鉱業権の価額が、その鉱山の固定資産及び流動資産の価額の合計額に満たない場合には、その鉱山の鉱業権の価額は、(1)又は(2)の定めにかかわらず、その鉱山の固定資産及び流動資産の価額の合計額によって評価する。
(4) 休業している鉱山等で近く所得を得る見込みがないものの鉱業権
休業している鉱山等で、近い将来に所得を得る見込みがないものの鉱業権の価額は、その鉱山が廃鉱となった場合においても他に転用できると認められるその鉱山の固定資産及び流動資産の価額の合計額によって評価する。
(5) 探鉱中の鉱山の鉱業権
探鉱中の鉱山の鉱業権の価額は、その鉱山に投下された費用現価の100分の70に相当する価額によって評価する。(租鉱権の評価)
159 租鉱権の価額は、租鉱権の存続期間(存続期間の延長が予想されているときは、その延長見込年数を加算した年数とする。)をn年とし、その租鉱権の設定されている鉱山が操業しているかどうか等の区分に応じ、それぞれ、156≪鉱業権の評価≫の(1)から(4)までの定めを準用して評価する。