香典は、通夜や葬儀のときに会葬者から渡される金品です。
線香や花の代わりに故人に供えるため、「香典は故人のものなのか」、「そうであれば相続税はかかるのか」といった疑問があるかもしれません。
この記事では、香典はいったい誰のものなのか、どのような税金がかかるのかについて解説します。
~目次~
1.葬儀でもらう香典は喪主のもの
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!香典は亡くなった人の霊前に供えることから、故人のものであると思われるかもしれません。
しかし、香典は葬儀費用に充てられることが一般的であり、葬儀を執り行う喪主のものとされます。
1-1.香典は喪主のものなので遺産分割の対象外
香典は喪主のものであり、故人の財産ではありません。したがって、遺産分割の対象にはなりません。
葬儀費用に充てて香典が余ったとしても喪主のものとなりますが、余った香典も四十九日や一周忌などの法事に使われる場合がほとんどでしょう。
2.香典にはどのような税金がかかるのか?
香典は、葬儀費用に充てるとはいえ、喪主が会葬者から受け取るものです。
お金を受け取った以上、香典に何らかの税金がかかると思われるかもしれませんが、基本的に香典に税金はかからないと考えてよいでしょう。
ただし、香典が過度に高額になった場合には課税されることもあるため注意が必要です。
2-1.香典は喪主のものなので相続税はかからない
前の章でお伝えしたように、香典は喪主が受け取るものであり、故人の財産ではありません。そのため、香典に相続税は課税されません。
2-2.贈与税も通常かからない
香典は贈与されたという扱いになりますが、通常は贈与税も課税されません。
贈与税は個人から贈与された財産に対して課税されますが、財産の性質や贈与の目的によって非課税となる場合があります。
香典について相続税法基本通達では、「社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しない」と定められています。
相続税法基本通達
(社交上必要と認められる香典等の非課税の取扱い)
21の3-9 個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする。(昭50直資2-257改正、平15課資2-1改正)
(引用:国税庁ホームページ 相続税法基本通達)
いくらまでであれば「社会通念上相当と認められる」かについては、一律に金額が定められているわけではありません。
社会通念上相当と認められる金額の上限は、喪主の社会的地位や贈与者との関係などによって変わると考えられます。
2-3.所得税も通常かからない
社会通念上相当と認められる金額であれば、香典に所得税がかかることもありません。
法人から贈与を受けた財産は一時所得として所得税が課税されますが、所得税基本通達では、香典については課税しないと定められています。
ただし、贈与税の場合と同様に、非課税となるのは社会通念上相当と認められるものに限られています。
所得税基本通達
(葬祭料、香典等)
9-23 葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、令第30条の規定により課税しないものとする。(平元直所3-14、直法6-9、直資3-8改正)
(引用:国税庁ホームページ 所得税基本通達)
3.葬儀にかかる費用は相続税の対象から控除できる
葬儀で受け取った香典は、相続税の課税対象になりません。
このほか、葬儀にかかる費用は、相続税の課税対象になる財産の価額から控除することができます。
これは、葬儀を行うことは社会通念上当然のことであり、その費用は遺産から負担されるべきであるという考えによるものです。
相続税の課税対象から控除できる葬式費用は、以下のように例示されています。
葬式費用となるもの
(1) 葬式や葬送に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)
(2) 遺体や遺骨の回送にかかった費用
(3) 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
(4) 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
(5) 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用
葬式費用に含まれないもの
(1) 香典返しのためにかかった費用
(2) 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
(3) 初七日や法事などのためにかかった費用
(引用:国税庁ホームページ No.4129 相続財産から控除できる葬式費用)
ただし、葬式費用に含まれるものであっても、過度に高額なものは控除が認められない場合があります。
相続税の課税対象から控除できる葬式費用の範囲については、下記の記事で詳しく解説しています。
3-1.香典返しの費用は相続税の対象から控除できるか?
上記の「葬式費用に含まれないもの」で示したように、香典返しのためにかかった費用は相続税の課税対象から控除することはできません。
香典は故人の財産ではなく、相続税の課税対象ではありません。したがって、その返礼費用を相続税の課税対象から差し引くことはできません。
3-2.会葬御礼の費用は相続税の対象から控除できるか?
会葬者に対する返礼品として、通夜や葬儀の当日に会葬御礼を手渡す場合があります。
会葬御礼にかかった費用を相続税の課税対象から控除できるかどうかは、別途香典返しをするかどうかによって変わります。
- 香典返しをする場合:会葬御礼の費用は葬式にかかった費用の一部として、相続税の課税対象から控除することができます。
- 香典返しをしない場合:会葬御礼は香典返しとみなされ、費用を相続税の課税対象から控除することはできません。
4.まとめ
ここまで、香典に対する税務上の扱いについて解説しました。
香典は喪主に対して贈られるものであり、相続税の課税対象にはなりません。遺族に対する見舞という性質を考慮して、贈与税や所得税もかかりません。
しかし、香典の金額が過度に高額になった場合については、課税の対象になることもあります。
香典や葬儀費用について税務上問題になるのは、次の二点です。
- 香典の金額が「社会通念上相当と認められるもの」であるかどうか
- 葬式費用として相続税の課税対象から控除できる費用の範囲
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