非上場株式の評価において純資産額価額方式で算定が行われる場合、相続税評価に基づく資産から、負債と評価差額への法人税等相当額を差し引いて評価額を計算しなければなりません。このとき、企業会計上では損金や益金として扱われるデリバティブ負債・資産(金利スワップ)の取扱いについて解説します。
~目次~
1.デリバティブ負債・資産(金利スワップ)とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!1-1.デリバティブとは
デリバティブとは、金融商品から派生した取引商品で、通貨や金利、株式などの資産の価格を基準に行われる金融取引を指します。スワップ取引はデリバティブ取引の一つで、同一の想定元本に対して異なる方法で計算されたキャッシュフローを交換するというもので、2者の相対取引として行われます。
固定金利と変動金利といった異なる方式の受払条件を交換する金利スワップは、金利を固定化したい場合に行われるスワップ取引です。変動金利で資金を調達している場合に、その金利を実質固定化し、金利変動リスクを回避するために多く利用されています。
1-2.企業会計におけるデリバティブ負債・資産
法人税法では、デリバティブ取引を行う場合、事業年度末にはそれらの取引は決済されたものとみなして時価評価を行い、利益もしくは損失額が計上されます。これはデリバティブ負債・資産とよばれますが、あくまでもみなし上発生している負債や資産であるということに注意が必要です。
2.デリバティブ負債は非上場株式評価において負債として計上不可
非上場株式を評価する場合、会社の資産の相続税評価額から負債および評価差額に対する法人税額相当分を控除した金額を株式の総額とします。その際に、法人税申告書別表5(1)にデリバティブ負債が計上されていた場合でも、相続税評価においては負債として計上することはできません。
デリバティブ負債は、金利スワップ取引においてみなし決済を行った結果の評価損が負債として計上されたもので、確定した負債ではありません。そのため、相続税評価においては負債として計上することができないのです。負債として計上する条件は、原則として課税時に確実と認められるものであることとなっています。
3.デリバティブ資産は非上場株式評価において資産として計上不可
逆に、デリバティブ取引を行っている会社がみなし決済を行った結果発生した評価益についても、株式評価が純資産価額方式の場合には資産として計上できません。反対勘定として生じているに過ぎないからです。
この金利スワップ資産に関しても、決済や利息分支払いを受けたときなど、その利益が確定した場合にのみ、資産として計上することが可能となります。
ただし、金利スワップ取引そのものに関しては、別途財産評価基本通達に準じた方法で評価が行われます。