【説例の前提条件】
推定被相続人Aが所有する土地甲の上に、平成元年にAの長男Cが代表取締役を務める同族会社Bの建物が建てられました。
その際、Aと同族会社との間で使用貸借契約を締結し、所轄税務署に対して土地の無償返還に関する届出書を提出しています。
当該土地の自用地評価額は1億円であり、使用貸借契約の締結当時に権利金の収受はありませんでした。
なお、同族会社Bの株式はすべて長男Cが所有しています。
1. 法人が使用している他人の土地の評価方法の概要
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!1-1. 借地権の認定課税
法人が他人(その法人の代表取締役も含めます)の所有する土地に建物を建てる場合において、通常、権利金を収受する慣行があります。
それにもかかわらず、権利金を収受せず、相当の地代を収受しないときは、一般的に借地権の認定課税が行われます。(法基通13-1-3)
しかし、賃貸借契約書において、将来借地人等がその土地を無償で返還することが記載され、かつ、「土地の無償返還に関する届出書」をその法人の納税地の所轄税務署長に届け出たときは、借地権の認識はしないことになり、上記の借地権の認定課税を回避できます。
1-2. 底地の評価
相続税の財産評価では、使用貸借契約を締結したうえで土地の無償返還に関する届出書を提出していれば、借地権を認識しないという考えのもと、底地の評価は自用地評価額となり、賃貸借契約を結んでいれば、自用地評価×0.8で評価することとなります。(本設例の場合、同族会社Bの株式評価には影響を与えませんので、説明を省略します)
相続開始時点において、賃貸借契約となるためには、固定資産税相当額の2~3倍以上の金額の地代を設定していなければ、賃貸借契約を締結していたとしても、実質的に使用貸借契約だと判断されるケースもあるので、注意しましょう。
本設例の場合、賃貸借と認められる地代を設定したうえで賃貸借契約書を改めて締結し、併せて、土地の無償返還に関する届出書も提出し直しましょう。
なお、相続が発生することを見込んで、相続開始直前に意図的に賃貸借契約を締結したなどの場合は、課税庁から指摘される可能性があることを申し添えます。
2. 説例の評価計算
A. 対策前
1億円
B. 対策後
1億円×0.8=8,000万円
対策後は対策前と比べて、2,000万円の評価減。