同族会社への貸付金の相続税評価で回収不能かどうかの判断基準

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貸付金債権等の相続税評価において、財産評価基本通達205(貸付金債権等の元本価額の範囲)に定める「課税時期においてその回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるもの」に該当するかどうかの判断基準について解説を行います。

1.財産評価基本通達205によると

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まず、財産評価基本通達205によると以下のような(1)~(3)の例示があります。
これを見ると、実質的に破たんしているような状態が求められていることが分かります。

1)債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く)
イ 手形交換所(これに準ずる機関を含む)において取引停止処分を受けたとき
ロ 会社更生法(平成14年法律第154号)の規定による更生手続開始の決定があったとき
ハ 民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の決定があったとき
ニ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったとき
ホ 破産法(平成16年法律第75号)の規定による破産手続開始の決定があったとき
ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき

(2)更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額
イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額
ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額

(3)当事者間の契約により債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等が行われた場合において、それが金融機関のあっせんに基づくものであるなど真正に成立したものと認めるものであるときにおけるその債権の金額のうち(2)に掲げる金額に準ずる金額

2.単に赤字・債務超過の状態ではダメ

「課税時期においてその回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるもの」という文言のみを読むと、赤字が続いており、債務超過の状態であれば、この状態に該当するとも考えられなくはないです。

ただ、この「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるもの」については、債務者の資産状況及び営業状態が破たんしていることが客観的に明白であること、そして債権の回収の見込みがないことが客観的に確実であると言い切れることが必要になります。

過去の採決事例や判例も多く出ていますので、それらを参考にして頂きたいのですが、基本的には法的整理の状態であるような状態でないと認められるのは難しいと考えられます。

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