「配当還元方式」は、非上場株式の中で限られた条件を持つ株式を評価する際の特例の方式です。非上場株式を評価する際に通常採用される「原則的評価方式」に比べて一般的には評価額が低くなっています。ここでは、無配の場合の配当還元方式の計算について解説しましょう。
~目次~
1.無配の場合には1株当たり「2円50銭」と仮定して計算
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!1-1.非上場株式で採用される配当還元方式とは?
株式の相続税評価の際に、非上場でなおかつ取引が行われていない株式は、上場株式のように市場価格を評価の目安にすることができません。そこで、「原則的評価方式」で評価を行いますが、「原則的評価方式」は、会社の利益や資産も含めた複雑な計算式となります。そのため、非上場株式の中で株式保有のメリットが少ない少数株主が保有している株式については、「原則的評価方式」よりも単純な計算式となる「配当還元方式」が採用されるのです。「配当還元方式」は株式の配当に着目した方式で、通常「原則的評価方式」よりも低めの評価額になります。
1-2.非上場株式で無配の場合の配当還元方式の計算方法
無配とは、株式の配当がないことです。株式の配当がない場合、配当還元方式の計算方法をそのまま採用すると、評価額がゼロ円になってしまいます。そこで、無配の場合は1株当たりの年配当金額を2円50銭と仮定して計算することが定められているのです。また、配当金が2円50銭以下の場合も、やはり1株当たり2円50銭で計算します。この「1株当たり」は、一律に株式の数=資本金等の額÷50円とみなすことになっています。なぜならば、発行株式数や株式の価格が、会社ごとに異なるからです。資本金等の額が同じ会社の場合、発行株式数が1,000株の会社と2,000株の会社では、1株当たりの資本金等の額が違ってきます。そうすると、次に述べる配当還元方式の計算式が成り立たなくなるのです。
2.具体的な無配の場合の配当還元方式の計算方法
配当還元方式の計算式は、以下のとおりです。
配当還元金額=(1株当たりの年配当金額÷10%)×(1株当たりの資本金等の額÷50円)
この場合の「1株当たりの年配当金額」は、相続の開始日より前の2期の決算期における配当の平均値を算出します。また、「1株当たりの資本金等の額」の資本金等とは、資本金と資本余剰金を合計した金額です。この合計金額は、会計上の価額ではなく税務上の価額から求めます。
この配当還元方式の計算式を無配の場合に当てはめると、次のようになります。
無配の場合の配当還元金額=(2円50銭÷10%)×(1株当たりの資本金等の額÷50円)
配当還元方式は、少数株主で、会社の経営に参画できなかったり株式保有のメリットが配当金しかなかったりする人が保有する株式が対象なので、このような低めの評価が可能なのです。
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