宅地の相続税評価を行う際、路線価のある地域では路線価方式により計算します。路線価は、通常、各地域の容積率を反映した価額となっていますが、その宅地が2以上の容積率の異なる地域にわたる場合、容積率の違いによる影響度を勘案して相続税評価額を減価できることがあります。
~目次~
1.「容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地」とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!例えば奥行きの長い土地などでは、1画地の宅地であっても途中から容積率が変わる場合があります。下図の例では、正面路線価の道路に面した部分は容積率が300%、道路から奥まった部分は200%となっています。
容積率が高い方がその宅地の利用価値が高くなり収益性が上がります。路線価は通常容積率をもとに決められているので、容積率200%の部分の宅地まで正面路線価で計算をしてしまうと、高く評価し過ぎることになってしまいます。
下図の例も、1画地の土地で容積率が異なる例です。
2.「容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地」の相続税評価
容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地は、容積率の違いによる個別事情(影響度)を考慮して減価することができます。具体的には、正面路線価をもとにしたその宅地の評価額から、その評価額に容積率の差に基づく原価率を乗じた金額を控除することで評価します。
容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価は以下の算式で計算をすることができます。
容積率が価額に及ぼす影響度は地区区分によって定められており、下記の表の数値となります。
2-1.評価減ができるケースの例示
下図のように、その宅地に正面路線に接している宅地と容積率の違う部分があり、その宅地が正面路線に接していない場合、容積率の違いを考慮して相続税評価額を減価することができます。
2-2.評価減ができないケースの例示
下図のように、1画地が2以上の容積率の異なる地域にわたる場合でも、その正面路線に接する部分の容積率と異なる容積率の部分がない場合は減価をすることができません。
この場合は、容積率は異なるものの、それぞれの部分が正面路線に接しており、正面路線の路線価は容積率の違いを反映して定められていると考えられるため、相続税評価額を減価することはできません。
3.「容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地」の相続税評価に係るQ&A
3-1.減額計算に使用する容積率は、指定容積率もしくは基準容積率?
容積率とは、「建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合」であり、都市計画により土地ごとに「指定容積率」が定められています。しかし、実際に建築物等を建築する際は、その敷地の前面道路の幅員による容積率の制限を考慮する必要があります。前面道路の幅員を考慮した容積率を「基準容積率」といいます。
容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の相続税評価をするにあたって、減価計算に使用する容積率は指定容積率と基準容積率のいずれか小さい方の容積率を使用することとなります。
3-2.都市計画道路予定地の区域内になる場合の評価方法は?
宅地が都市計画道路予定地の区域内になる部分がある場合、その部分については通常の価額に用途地域や容積率、地積割合によって定める補正率を乗じて評価します。
その宅地が容積率の異なる2以上の地域にわたる場合、補正率を判断する際の容積率は、各地域の容積率を加重平均して求めた率になります。