相続税の納税猶予の適用を受けることができる農業相続人

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

農地等についての相続税の納税猶予とは、被相続人が所有する農地を一定の要件を満たす相続人が相続によって取得した場合、その農地に係る相続税額の一部の納税を猶予するという制度です。では、被相続人の孫が包括遺贈によって農地を取得した場合、当該制度の適用はあるのでしょうか。以下で解説します。

相続税の納税猶予の適用を受けることができる農業相続人とは

農地等についての相続税の納税猶予とは、農業を営んでいた被相続人から一定の要件を満たす相続人が農地を相続し、かつ、相続した農地で被相続人が営んでいた農業を承継する場合等には、相続税の一部の納税を猶予するという制度です。

さて、ある質問者から、農業を営んでいた被相続人から全財産を包括遺贈によって被相続人の孫が取得した場合、相続財産である農地について、農地等についての相続税の納税猶予は適用されるのかどうか、という照会がなされました。

この照会に対して、国税庁では、以下のように回答しています。

農地等についての相続税の納税猶予制度の適用を受けることができる者は、民法で定める被相続人の相続人に限られるので、相続人とはならない孫が被相続人の農地を相続する場合には、当該制度の適用を受けることができません。

上記の質問者からの照会とそれに対する国税庁の回答が、国税庁の質疑応答「相続税の納税猶予の適用を受けることができる農業相続人」になります。

相続税の納税猶予特例の適用と民法の規定について

上記のような疑義がなぜ生じたのかというと、民法第990条「包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する」と規定しているからです。

包括受遺者が相続人と同一の権利義務を有するとすれば、包括遺贈によって農地を取得した相続人ではない孫も、相続人と同一の権利を取得した者として、農地等の相続税の納税猶予の特例の適用を受けることができるはずです。

しかし、上記の質疑応答で、国税庁はこの考えを明確に否定し、納税猶予特例を受けることができるのは、民法で定める相続人に限定するとの考えを示しました。

ちなみに、民法では相続人は次のように規定しています。
①被相続人の配偶者は常に相続人となる(民法第890条)
②被相続人の子又はその代襲者は、第一順位の相続人となる(民法第887条)
③被相続人の直系血族(父母、祖父母等)は、第二順位の相続人となる(民法889条)
④被相続人の兄弟姉妹は第三順位の相続人となる(民法889条)

なお、配偶者と②③④の規定によって相続人がいる場合は、配偶者とその相続人は同順位の相続人となります。


【相続実務アカデミー】実務向け最新の相続知識を無料で!!無料会員登録はこちら
【採用情報 - RECRUIT -】チェスターで一緒に働きませんか?相続業務の魅力・給与・福利厚生ectはこちら
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る