相続税の計算では、遺産総額から直接差し引くことが認められているものがあります。遺産総額から控除可能なものは、「葬式費用」と「債務」の2つです。しかしながら、「債務」については明確な提示がないのが現状。相続税の計算における「債務」はなにを指すのか、具体例を交えながら解説していきます。
~目次~
1.確実と認められる債務とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!相続税の計算では、遺産総額から葬式費用と「債務」の控除を行えるとされていますが、「債務」として認められるのは「確実と認められる」場合です。ここで示されている「確実」は、基本的には被相続人が亡くなった時点で存在が確認される債務のことになります。つまり、確実性が認められない曖昧な債務においては控除の対象外となるということです。
ただし、確実の証拠に必ずしも書面での証拠が必要になる訳ではありません。相続税基本通達の第14条1の確実な債務によりますと、書面での証拠が必ず必要ではないと記載されているためです。つまり、書面上で債務が確認できなくても、根拠に基づいた債務であれば認められるということになります。
さらに、同項目では被相続人の死亡時に金額が確定していない場合でも、確実に存在するものであれば、確実な範囲に限って控除の対象にすることができると明記されています。
国税庁の示す「確実と認められる債務」というのは、根拠がある債務であれば、認められると解釈することができます。
2.相続税から控除できる確実と認められる債務の具体例
言葉だけでは分かりにくい債務控除。具体例をもとに、確実と認められる債務の内容を理解していきましょう。
2-1.金融機関からの借り入れ
被相続人が金融機関などから借り入れを行っている場合です。手続きの際の書面のやり取りで証拠がありますし、被相続人が亡くなった時点で債務として存在する訳ですから、確実な債務に該当します。
2-2.被相続人に課された税金
たとえ被相続人が亡くなった時点で金額が確定していなくても、徴収されるものであることから、所得税や固定資産税などの税金は債務と考えることができます。ただし、通常加算されるはずのなかった延滞税などのペナルティにあたる税金は対象外です。
2-3.被相続人が預かっていた敷金
確実な根拠があるという理由で、被相続人が宅地を賃貸することで預かっていた敷金も確実と認められる債務として考えることが可能です。
2-4.弁済不能状態の保証債務と連帯債務
保証債務と連帯債務については、相続税基本通達の第14条3の「保証債務及び連帯債務」の項目で詳細が記載されている通り、基本的には確実と認められる債務の対象にはなりません。将来返済の可能性があっても、被相続人が亡くなった時点では確実に債務となる訳ではないからです。
しかしながら、債務の当事者が弁済できない状態になっている場合は例外です。債務者への求償を履行しても返還の見込みがない場合は、債務控除の対象とすることができます。連帯債務の場合は、負担金額が明確になっている場合に債務控除が可能です。
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