社会的に地位のある方などは、いわゆる愛人と呼ばれる女性がいることも多いでしょう。妻以外で身の回りのお世話をしてくれた女性にいくらかの財産を遺したいと考える方もいらっしゃるようです。どのような方法を採れば愛人に財産を遺すことができるのでしょうか。
1.生命保険の受取人を愛人に指定するのは無理
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!かつては、妻以外の女性、いわゆる愛人を死亡保険金の受取人にした生命保険に加入することで、愛人に財産を遺すという例が多くありました。しかし、これは昔の話で、生命保険に関連した犯罪が多発したことなどから、現状では愛人などの第三者を死亡保険金受取人に指定することは困難です。本妻がいなければ、いわゆる内縁の妻を死亡保険金受取人に指定することもできますが、その場合でも保険会社によって「10年以上の同居」などを要件にしているのが一般的です。
保険業法が改正されたことにより、本人確認がより厳しくなったことからも、愛人を死亡保険金受取人にすることは無理であると考えられます。
2.愛人に財産を遺す方法
それでは、どうしても愛人に財産を遺したい場合、どのような方法が考えられるでしょうか。ここでは、遺贈と死因贈与についてご説明します。
2-1.遺言書で財産を指定する
被相続人が遺言書によって受遺者に遺産を渡すことを遺贈といいます。遺贈によって、被相続人は財産を受け取る人や受け取る財産を指定することができます。遺言書がない場合、被相続人の財産は法定相続人が相続することになりますが、遺言書で遺贈することによって相続人以外にも財産を遺すことができます。
ただし、被相続人に法定相続人がいる場合、法定相続人には遺留分という一定の財産を受け取る権利があります。仮に愛人に全財産を遺贈するという遺言書を作成しても、裁判ではほとんどの場合、遺留分を認める判決となるため、あらかじめ遺留分を侵さない内容の遺言書にした方がいいでしょう。
遺贈によって受け取った財産も、当然相続税の支払いの対象になります。法定相続人以外の第三者が遺産を受け取った場合、相続税の2割加算の対象になってしまいます。
2-2.死因贈与契約で渡す
死因贈与とは、「自分が死んだらこの財産を渡す」というように、死亡を条件として生前に交わす贈与契約です。遺贈は遺言書を作成する側の意思ですが、死因贈与は贈与契約であるため、贈与者と受贈者の合意が必要となります。遺贈と死因贈与の違いは、遺贈には遺言書が必要だけれども死因贈与には遺言書は要らない、ということも挙げられます。
死因贈与は、贈与契約であるため、口約束でも効力はあります。といっても、被相続人が死亡してしまえば、その口約束を証明することはできません。法定相続人と争いになることも考えられるので、確実に愛人に遺産を遺したいなら、あらかじめ契約書を作成しておいた方がいいでしょう。死因贈与のデメリットとしては、契約書を作成した場合、後日、状況が変わってしまってもそれを撤回できないということです。
死因贈与によって遺産を受け取った場合も、遺贈と同様に相続税の課税対象となり、法定相続人以外の第三者は相続税の2割加算の対象になります。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。
なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問い合わせ→記事内容に関するお問い合わせ」よりお問合せ下さい。
但し、記事内容に関するご質問や問い合わせにはお答えできませんので予めご了承下さい。