国際相続における相続税控除の適用可否について

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日本の相続税法では、相続又は遺贈(死因贈与を含む)により財産を取得した個人の納税義務を、個人の住所地及び国籍等で判定します(相法1条の3、第1章参考)。

この納税義務の区分は、債務控除及び税額控除の適用関係にも影響があります。ここでは国際相続における控除の適用可否について解説していきます。

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1.制限納税義務者が控除できる債務の種類と要件

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法令等には下記のようなものが、具体例として明示されています(相法13条②)。

  1. 国内財産に係る公租公課
    「その財産に係る公租公課」とは、法施行地にある財産を課税客体とする公租公課、例えば、固定資産税、鉱区税等をいうものとする(相基通13-7)。
  2. 国内財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
  3. 上記1.2.に掲げる債務を除くほか、国内財産の取得、維持又は管理のために生じた債務
  4. 国内財産に関する贈与の義務
  5. 前各号に掲げる債務を除くほか、被相続人が死亡の際国内に営業所又は事業所を有していた場合においては、その営業所又は事業所に係る営業上又は事業上の債務

2.税額控除

税額控除とは、相続税額を計算したのちに一定の要件を満たす個人については一定額を税額から控除できる制度です。

国際相続においては、納税義務者の区分によって適用が異なる未成年者控除と障害者控除が論点となりますので、下記で解説をしていきます。

2-1.未成年者控除・障害者控除

相続又は遺贈により財産を取得した個人が法定相続人に該当し、かつ、十八歳未満の者(※)又は障害者である場合においては、養育費や生活費の確保等を考慮して一定の金額を相続税額から控除することができます(相法19条の3、19条の4)。

上記の控除は、相続又は遺贈により財産を取得した個人で法定相続人に該当し、かつ、十八歳未満の者(※)であることに加えて、未成年者や、障害者の定義は国によって異なるため、その対象者は次のような制限があります。

<未成年者控除の場合>
適用対象者 ⇒ 居住無制限納税義務者 及び 非居住無制限納税義務者

<障害者控除の場合>
適用対象者 ⇒ 居住無制限納税義務者
(※相続開始が令和4年3月31日以前の場合は「二十歳以上の者」となります。)

2-2.租税条約上の取り扱い

日本は相続税について米国との間に日米相続税条約を結んでおり、それに伴う省令において未成年者控除・障害者控除の特段の取り扱いが規定されています。

上記において制限納税義務者は、未成年者控除・障害者控除のいずれも適用対象外ですが、米国居住の制限納税義務者においては未成年者控除・障害者控除の対象となることが認められています。

ただし、無制限納税義務者に適用される控除額全額を控除することはできず、一定割合(国内財産の価額÷全世界財産の価額)の限度があります(日米相続税条約5条)。

3.無制限納税義務者に係る未成年者控除の控除不足額の取扱

無制限納税義務者は未成年者控除、障害者控除の控除を適用することが出来ます。これらの者の控除不足額が生じた場合には、その控除不足額は扶養義務者から控除することが出来ますが、この扶養義務者が無制限納税義務者でなければならない、という規定はありません。したがって、扶養義務者が制限納税義務者である場合でも、控除不足額を控除することが出来ます。

4.寄付による相続財産の非課税制度

日本の相続税において、その相続又は遺贈により取得した財産を国等や公益社団法人、公益財団法人、その他政令に規定する公益性の高い団体に寄付すると、その財産の価額を相続税の課税価格の計算に算入しない旨の規定があります(措法70)。

この寄付する財産は、国内財産である必要はありませんが、寄付の相手先は政令により規定されており、公共性の高い日本の法人格(学校法人、社会福祉法人等)に限られます(措令40の3)。

したがってどんなに公共性が高い海外の団体に寄付をしたとしても、寄付控除の適用はありません。


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