債務超過に陥っている合名会社および合資会社の無限責任社員が亡くなった場合、本来、その社員が負担すべきであった債務は、相続時にどのように扱ったらよいのでしょうか。国税庁の公式ホームページ上にある事例を含めて紹介していきましょう。
1.無限責任社員の借金等は債務控除できる
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!相続税法第13条第1項に基づき、相続開始時に被相続人の債務が存在していれば、相続の対象となる財産価額から控除することができます。また、無限責任社員が有する会社債務に対して、本項が適用できるか否かについては、国税庁のホームページで具体的事例が紹介されているため、適用可と結論づけられます。
以上の理由から、債務超過に陥った合名会社等において、会社債務の返済義務を負う無限責任社員が亡くなった場合、その財産の相続時には債務控除が可能です。なお、債務控除ができる金額は、あくまでも亡くなった無限責任社員が負担すべき相当分となります。
2.債務控除によって相続税の節税効果が期待できる
無限責任社員によって構成される合名会社と、有限責任社員により運営されている株式会社を例に挙げ、債務控除による相続税の節税メリットの有無を比較してみましょう。
例えば、対象となる合名会社と株式会社が、それぞれ2億円の債務超過となっており、亡くなった社員の所有財産が3億円であると仮定します。
合名会社の無限責任社員(応分50%)が亡くなった場合には、相続財産にかかる相続税の算定に際し債務控除が適用されるため、以下のとおり節税メリットが享受可能です。
債務控除後の相続財産総額:3億円-(債務超過額2億円×応分50%)=2億円
合名会社の場合の相続税の節税メリット:(債務超過額2億円×応分50%)×相続税率40%=4,000万円
一方、会社形態が株式会社である場合には、社員は有限責任であり、出資額以上の弁済責任は問われません。したがって、株式会社が有する債務超過の金額とは関係なく、相続対象となる遺産総額は3億円のままとなります。
以上より、選択する会社形態によって、相続税の税額が大きく異なることは明白です。したがって、相続税の節税対策の一環として、会社形態を株式会社等から合名会社等へ変更するのも一案と考えられます。ただし、会社形態を変更することにより、その他の点においてデメリットがある可能性にも留意して、慎重な判断を下すことが大切です。
例えば、合名会社の社員は、債務保証に関する事項以外にも様々な項目について無限責任を負うことになります。したがって、組織変更に踏み切る前に、総合的にメリットとデメリットを比較しなければなりません。