亡くなった人が直前まで住んでいた宅地等を相続する場合に利用できる「小規模宅地等の特例」ですが、配偶者や被相続人の子のほか、条件によっては法定相続人以外の親族が相続する場合でも適用が可能です。特例が利用できる親族の範囲とその条件についてご説明します。
1.配偶者は無条件に適用対象者になる
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」は、被相続人が使用していた宅地等を相続する場合に、条件にあてはまった場合に課税評価額から一定の割合を減額することができる制度です。
被相続人の配偶者がこれらの宅地等を相続する場合には、「小規模宅地等の特例」は無条件で適用されます。配偶者の場合では、その建物に同居している場合だけでなく、別居の場合でも対象です。また、相続した後はそのまま住み続けていても、相続後にすぐに売却した場合にも適用されます。
2.同居していた親族
次に、亡くなった被相続人と同居していた親族が相続する場合です。同居の親族が宅地等を相続する場合に「小規模宅地等の特例」を受けるには、2つの条件があります。
それは、相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日より10か月)までその住居に住み続けていること、そして土地も保有したままでいることです。
この2条件を満たすことで、評価額の80%の減額を受けることができます。子が存命である場合の孫などの法定相続人以外の同居の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族及び配偶者)が遺言書による遺贈によって相続する場合にも、特例を受けられますが、相続税が2割加算されます。
3.家なき子特例の場合の判定は要注意
また、被相続人に配偶者や同居している親族がいない場合には、別居している親族の相続でも「小規模宅地等の特例」を受けることができます。しかし、相続開始前3年間に、自己や自己の配偶者の所有する家屋に住んだことがないこと、という要件がありました。このため、家なき子特例とも呼ばれている制度です。
しかも、平成30年度税制改正において、「自己や自己の配偶者」のみならず「3親等以内の親族や特別の関係がある法人」の所有する家屋に住んだことがないことも要件に加わるようになりました。
さらに、「相続開始時に居住している家屋に過去に所有していたことがないこと」という要件も加わりましたので、過去に相続人が所有していた家屋を他人や親族に売却して、いわゆるリースバックによって継続的に居住しているような場合に、家なき子特例が適用できなくなりました。
なお、納税者に不利な改正であることを考慮し、平成30年3月31日現在において平成30年度改正前の家なき子特例の要件を満たしている場合には、平成32年3月31日までに発生した相続に限り、改正前の要件をもって家なき子特例が認められます。
4.まとめ
小規模宅地等の特例が受けられる親族の範囲と条件についてご紹介しました。配偶者の場合は無条件で特例が適用されますが、同居親族の場合あるいは家なき子特例の場合は適用対象となる要件がそれぞれ異なりますので、注意が必要です。