【説例の前提条件】
被相続人の敷地に二世帯住宅を建て、推定被相続人Aと長男Bの家族が居住する予定です。
設計では建物内部では行き来はできませんが、一階部分はAと配偶者が、二階部分はB世帯がそれぞれ居住する予定です。
登記を共有登記にするか、区分所有登記にするかを検討中です。
1. 二世帯住宅と税の概要
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!二世帯住宅は、外見は1つの建物を二世帯で使用し、各世帯がそれぞれキッチンやトイレ、お風呂などの生活必需設備を分離できます。本設例のように、内部で行き来ができないように各世帯空間が完全に分離している場合には、1階は推定被相続人A、2階は長男Bといったように、区分所有登記をすることができます。
区分所有登記をした場合、不動産取得税や固定資産税の軽減措置の適用は、登記区分建物ごとに受けることができます。
しかし、相続税の小規模宅地等の特例の適用を考えた場合、二世帯住宅が区分所有登記である場合、被相続人以外の相続人が居住していた建物に対応する土地部分は、当該特例の適用を受けることができません。
2. 小規模宅地等の特例と二世帯住宅の関係
二世帯住宅の敷地で特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けようとする場合、問題となるのは被相続人の特定居住用宅地等の範囲はどこまで及ぶのかという点です。
本設例のように長男Bが居住している部分に対応する敷地は、特定居住用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例の適用を受けられるかどうかがポイントなわけです。
内部で行き来ができる構造で建物が単独登記または共有登記である二世帯住宅は、敷地全体が被相続人の特定居住用宅地等に該当します。
また、内部で行き来がでない構造で建物が単独登記または共有登記である二世帯住宅も、構造上はそれぞれ単独で登記可能な状態ですが、同居相続人の居住部分の敷地も、被相続人の居住の用に含みます。
内部で行き来がでない構造で建物が区分所有登記である二世帯住宅は、一棟の建物の敷地全体を被相続人の居住用の敷地と判定せず、被相続人が居住していた部分に対応する敷地だけが特定居住用宅地等に該当します。
ただし、一棟の建物に住んでいる親族が、生計一親族であれば、その部分も被相続人の居住用の敷地として特定居住用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例の適用対象となります。
なお、区分所有登記を行い、行き来もできない二世帯住宅に住む家族は、独立性が強いと考えられるため、生計一である可能性は低いことも考えられるでしょう。
3. 小規模宅地等の特例を適用する上でのポイント
既に区分所有登記している二世帯住宅を、共有登記の二世帯住宅に変更する登記(「区分建物合併登記」といいます。)することは可能ですが、一定の要件が不動産登記法第56条において定められています。
例えば、合併しようとする建物の1階部分と2階部分の所有者は同一でなければなりません。
つまり、現時点で1階の所有者が推定被相続人A、2階が長男Cである場合、各階の所有者を同一にするために、AとCとの間で交換等の手続きをしなければなりません。
また、共有登記に変更する場合は各所有者の当初の出資割合と持分割合を同一にしなければ、贈与と指摘される可能性もあります。
さらに、甲と長男Cがそれぞれにローンを組んでいた場合は、ローンを合算することが難しいため、どちらかが完済する必要が生じることも考えられます。
区分所有登記を解消する場合、相続税の軽減メリットを超えるぐらいの経費がかからないかどうか、事前に十分に検討する必要があります。
4. 説例の評価計算
4-1. 対策前(区分所有登記)
①Aに対応する土地の評価額
50,000千円× | 1 | × (1-0.8) = 5,000千円 |
2 |
※見切れている場合は右にスワイプしてください
②Bに対する土地の評価額
50,000千円 × | 1 | = 25,000千円 |
2 |
※見切れている場合は右にスワイプしてください
二世帯住宅全体の評価額
①+②=30,000千円
4-2. 対策後
①Aに対応する土地の評価額
50,000千円× | 1 | × (1-0.8) = 5,000千円 |
2 |
※見切れている場合は右にスワイプしてください
②Bに対する土地の評価額
50,000千円× | 1 | × (1-0.8) = 5,000千円 |
2 |
※見切れている場合は右にスワイプしてください
二世帯住宅全体の評価額
①+②=10,000千円
結果として、対策をすることで20,000千円の評価減となります。