非上場株式の評価をおこなう際、評価会社と類似業種に属する会社を比較する「類似業種比準方式」を採用するのが原則です。ただし、中には、「比準要素数0(ゼロ)」の会社もあり、類似業種比準方式が適用できないケースがあります。以下、「比準要素数0(ゼロ)」の会社の定義と相続税評価方法について解説していきます。
1.「比準要素数0(ゼロ)」の会社とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!「比準要素数0(ゼロ)」の会社とは、課税時期が属する年において、類似業種比準方式の計算に用いる3つの比準要素が、すべてゼロの会社と定義されています。
その3つの比準要素は、各業種目別の(1)1株当たりの配当金額、(2)1株当たりの利益金額、(3)1株当たりの純資産価額です。なお、課税時期とは、被相続人が死亡した日または財産を贈与により取得した日を指します。
評価方式の判定に必要な比準要素数の算出にあたり、上記(1)の配当金額については、直前期および直前々期の2期分の平均金額を使用します。
また、上記(2)の利益金額については、直前期の金額と、直前期および直前々期の2期分の平均金額を比較して、有利な方を選択するのが一般的です。
さらに、上記(3)の純資産価額については、直前期のみの帳簿価額による純資産価額を使用します。
2.「比準要素数0(ゼロ)」の会社の相続税評価方法
「比準要素数0(ゼロ)」の会社は、3つの比準要素がすべてゼロであることから、単純に「純資産価額方式」で評価をすることとなります。なお、具体的な「1株当たりの純資産価額」の計算方法は以下のとおりです。
<純資産価額方式による計算方法>
ステップ1:
直前期末時点の貸借対照表上の「資産の部」と「負債の部」に計上されている全勘定科目について、相続税法のルールに則り時価評価をおこないます。そうすることにより、計算の基礎となる「相続税評価による資産の部の合計額」(a)と「相続税評価による負債の部の合計額」(b)が算出できます。
ステップ2:
上記(a)から上記(b)を引き算することにより、「相続税評価による純資産価額」(c)を算出します。
ステップ3:
上記(c)の額には、含み益に対する法人税等が考慮されていないため、控除されるべき法人税等の金額を算定しなければなりません。したがって、まず上記(c)から貸借対照表上の純資産価額(資本の部の合計額)を引き算し、含み益(d)を算定します。その後、(d)の金額に法人税等の所定税率を乗じ、「含み益に対して課される法人税等税額」(e)を算出します。
ステップ4:
上記(c)から上記(e)を差し引きした金額が、「法人税等考慮後の相続税評価による純資産価額」(f)となります。そして最後に、金額(f)を発行済株式数で除することにより、「1株当たりの純資産価額」が算出できます。
3.純資産価額方式を適用する意義とは
仮に、「比準要素数0(ゼロ)」の会社で、類似業種比準方式を適用した場合には、過去2期分の利益がなく、株主配当もゼロであるため、評価額が低めに出る傾向があります。そのような不合理さを解消するために、「比準要素数0(ゼロ)」の会社に関しては、純資産価額方式を使用するルールが設けられているのです。
なお、参考情報となりますが、開業後3年未満の会社の場合も、「比準要素数0(ゼロ)」の会社と同様、純資産価額方式で相続税評価をおこないます。その背景として、節税対策を目的として新規会社を設立した人に対して、評価額が実際よりも低めに算出される「類似業種比準方式」の適用を防止する点が指摘されています。