農地等の納税の猶予の特例の検討は早めの着手が必要

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被相続人が農業を営んでおり、その相続人が相続により被相続人の農地を相続し、
農業も承継する場合に一定の要件を満たすと、相続した農地に係る相続税の一部の支払い猶予を受けることができます。そこで、この制度を利用する場合には、どのような注意が必要でしょうか。以下では、この問題について解説します。

農地等の納税猶予の特例とは

農業を行っていた被相続人が亡くなり、被相続人が保有していた農地を相続人が取得した場合で、当該相続人が相続税の申告期限までに農業を開始し、将来においても農業を継続することが見込まれる場合に、当該相続人は、一定の手続きを経ることにより、相続した農地のかかる相続税額の一部の納税猶予を受けることができます。

この特例のことを「農地等の納税猶予の特例」といいます。ちなみに、猶予を受けることができる相続税の税額は、農地の相続税評価額から農業投資額を控除した価額に対応する相続税額となります。

ここで、農業投資額とは、農業にしか使用しないとした場合に評価対象農地に付く評価額のことで、この価額は、国税庁によって、各都道府県ごとに、毎年度設定されます。そして、この農業投資額は、国税庁がHPを通して公開していますから、インターネットを利用すれば確認することができます。

平成27年度における東京都の田の農業投資額は90万円/10aとされていますから、例えば、東京都に所在する10a=110万円の田を相続により取得した相続人が、本特例を受ける場合には、その田の相続税を計算する際に、農業投資額である90万円のみを相続財産の価額に加えればよいことになります。

農地等の納税猶予の特例の検討は早めの着手が必要

農地等の納税猶予の特例を受けるためには、相続税の申告期限までに、所定の事項を記載した申告書を税務署に提出するとともに、納税猶予額及びその利子税の金額に見合う担保を提供することが必要です。

そして、その際の相続税の申告書には、担保関係書類や納税猶予の適格者証明書を添える必要があります。なお、納税猶予の適格者証明とは、納税猶予を受ける相続人が、相続後も農業を有する維持及び能力を有することを証明するもので、特例対象農地を管轄する農業委員会が、当該証明書を発行します。

担保関係書類を集める手続きや、農業委員会に申請して適格証明書の交付を受ける手続きには、時間がかかります。しかも、その手続きは、原則として、相続が開始してから10か月を経過する日の相続税の申告期限までに行わなくてはなりません。よって、本特例の適用を検討する場合には、早めの着手が必要です。


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