雇用主が従業員を受益者又は保険金受取人とし、また、従業員の退職を保険事故として信託契約又は生命保険契約を締結した場合、それに基づいて退職手当金等が支払われた場合、その退職手当金は相続税法上の「みなし相続財産」となります。そのことを順を追って説明します。
相続税法第3条の規定
相続税法第3条ではについて「みなし相続財産」について規定しています。「みなし相続財産」とは、本来の相続財産ではないが法律の規定により相続財産とみなして相続税の課税対象とする財産のことをいいます。
さて、相続税法第3条第1項第2号では、被相続人の死亡により相続人その他の者が当該相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む)で一定のものは、「みなし相続財産」とすると規定しています。
相続税法施行令第1条の3第8号の規定
相続税法施行令第1条の3第8号では、相続税法第3条第1項第2号括弧書き(政令で定める給付)について規定しています。それによると、「みなし相続財産」に該当する給与等に含まれる政令で定める給付には、法人税法で規定する適格退職年金契約その他の他退職給付金に関する信託又は生命保険の契約に基づいて支給を受ける年金又は一時金が該当します。
相続税基本通達3-27の規定
相続税基本通達の3-27においては、相続税法施行令第1条の3第8号で規定している「その他の他退職給付金に関する信託又は生命保険の契約」の意義について定めています。
それによると、雇用主が、従業員(従業員が死亡した場合には、その者の遺族を含む)を受益者又は保険金受取人として、信託会社又は生命保険会社と締結した信託又は生命保険契約で、当該信託会社又は生命保険会社が、当該雇用主の従業員の退職について当該契約に基づき退職手当金等を支給することを約したものをいいます。
なお、同通達のこの規定に該当する信託又は生命保険の契約は、保険料の負担者が誰であるかは問わないとされています。よって、雇用主や従業員以外の第三者が保険料を負担していた場合でも、その契約に基づく年金又は一時金は、相続税法上の「みなし相続財産」に該当します。