信託受益権とは、信託銀行などに信託した資産から発生する経済的利益を、受け取ったり利用したりする権利をいいます。不動産取引で活用されることが多く、信託受益権を売買する取引も行われています。
信託受益権はさらに、信託財産の管理・運用によって発生する利益を受け取る収益の受益権と、信託が終了したときに信託財産そのものを受け取る元本の受益権に分かれます。
1.信託受益権評価の特殊性
信託受益権のうち、元本の受益権と収益の受益権を同じ人が所有していれば、信託財産そのものを所有している場合と変わるところはありません。しかし、収益の受益権と元本の受益権をそれぞれ異なる人が所有している場合は、信託受益権を収益の受益権と元本の受益権に切り分ける必要があります。
財産評価基本通達では、(1)元本の受益者と収益の受益者が同じである場合、(2)元本の受益者と収益の受益者が同じであって、元本と収益の一部を受け取る場合、(3)元本の受益者と収益の受益者が異なる場合のそれぞれについて評価の方法を定めています。
2.信託受益権の相続税評価
財産評価基本通達に定める、信託受益権の評価方法は次のとおりです。
(1) 元本の受益者と収益の受益者が同じである場合
この場合は、信託財産そのものの価額で評価します。
(2) 元本の受益者と収益の受益者が同じであって、元本と収益の一部を受け取る場合
信託財産そのものの価額に、受益割合を掛けた値で評価します。
(3) 元本の受益者と収益の受益者が異なる場合
この場合は、元本の受益権と収益の受益権に分けて評価します。
収益の受益権は、将来受け取る利益の額に、受け取るまでの期間に応じた基準年利率による複利現価率を掛けた値で評価します。収益を受ける時期が複数回あるときは、その回ごとに利益の額を評価し、その合計額を収益の受益権の価額とします。
元本の受益権は、信託財産の価額から収益の受益権を差し引いた値で評価します。
(3)の場合に「将来受け取る利益の額に、受け取るまでの期間に応じた基準年利率による複利現価率を掛けた値で評価」するとは、何を意味しているのでしょうか。これは、現在価値に割り引くという考え方によるものです。
将来受け取る利益が100円である場合、10年後に受け取る予定の100円には、現在から10年後までにかかる金利が含まれていると考えます。この金利の部分を差し引くことで、現在における価値を算出します。
基準年利率と複利現価率は、それぞれ国税庁によって定められています。
【財産評価基本通達】(その他の財産)
(信託受益権の評価)
202 信託の利益を受ける権利の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(平11課評2-12外・平12課評2-4外改正)
(1) 元本と収益との受益者が同一人である場合においては、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額によって評価する。
(2) 元本と収益との受益者が元本及び収益の一部を受ける場合においては、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額にその受益割合を乗じて計算した価額によって評価する。
(3) 元本の受益者と収益の受益者とが異なる場合においては、次に掲げる価額によって評価する。
イ 元本を受益する場合は、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額から、ロにより評価した収益受益者に帰属する信託の利益を受ける権利の価額を控除した価額
ロ 収益を受益する場合は、課税時期の現況において推算した受益者が将来受けるべき利益の価額ごとに課税時期からそれぞれの受益の時期までの期間に応ずる基準年利率による複利現価率を乗じて計算した金額の合計額
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