分収林契約とは、森林所有者、造林を行う者、費用負担者の3者又は2者で、造林した森林に所属する樹木は、契約当事者が契約に定める割合で所有するというような定めをすることです。さて、分収林契約を締結していた造林者が亡くなり、造林者に帰属すべき分収林の樹木を相続することになった場合、その財産評価はどのようになるのでしょうか。以下では、この問題について考えます。
分収林契約に係る造林者の有する立木の財産評価
分収林契約に係る造林者の有する立木の財産評価については、国税庁が公開している財産評価基本通達の第5章第2節(126)に規定があります。それによると、分収林契約に係る造林者が有していた立木を相続した場合の当該立木の相続税財産評価は、通常の樹木の財産評価に造林者の分収割合を乗じた価額とする、と規定しています。
例えば、分収林に所属する樹木の所有権は、森林所有者が5、造林を行う者が3、費用負担者(出資者)が2の割合で各当事者に帰属するというような分収林契約が締結されていたとします。また、分収林に属するすべての樹木の相続税財産評価額が1,000万円だったとします。ここで、造林を行う者が亡くなり、相続が開始したとします。
造林を行なった者が亡くなると、分収林の樹木に対する造林を行った者の持分も相続の対象となります。この場合、造林を行った者の相続人が取得した分収林に属する樹木の持分の相続税財産評価額は、分収林全体の財産評価額である1,000万円に、分収林契約において定められて造林を行った者の持分割合(文収割合)である3/10を乗じた、300万円となります。
樹木の相続税財産評価について
相続税財産評価基本通達第5章第2節(126)の「分収林契約に係る造林者の有する立木の財産評価」においては、分収林契約で造林を行った者に帰属すると約されている樹木の評価は、同通達の同章同節(113)の「森林の主要樹木の立木の評価」又は同じく(123)の「保安林等の立木の評価」によってなすべきと規定しています。以下では、これについて説明します。
森林の主要樹木の立木の評価について
杉、ひのき、松、くぬぎ及び雑木の森林の主要樹種の財産評価は、相続税財産評価基本通達別表第2「主要樹木の森林の立木の標準価格表」に掲げる標準価額に、その森林の立木の密度や立木搬出の便、肥沃度などを加味した補正を行い、それに森林の地積を乗じた金額となります。
保安林等の立木の評価について
保安林等の立木の財産評価は、上記の森林の主要樹木の立木の評価に従って計算した分収林に所属する樹木の評価額から、法令に基づき定められた伐採関係の区分に従い以下に定める割合を乗じた価額を控除した価額を、その評価額とします。
・一定面積を限度として伐採を認める場合 0.3
・森林全体の成長の範囲内で一定の材積の伐採を認める場合 0.5
・特定の立木を指定して伐採を認める場合 0.7
・伐採を禁止する場合 0.9