被相続人が他人の所有する原野に賃借権を設定していた場合で、相続が開始すると、相続人がその賃借権を相続することになります。すると、相続人は、相続によって取得した原野上の賃借権の相続財産評価が必要になります。以下では、その評価について解説します。
原野に設定された賃借権の価額は農地に設定された耕作権の評価額を準用する
相続税評価の方法を定めた相続税基本通達の第2章第5節60で、原野係る賃借権の評価は、同通達第2章第5節42(耕作権の評価)に準じて評価すると規定しています。
したがって、原野に設定された賃借権の相続財産評価額は、原則として、農地に設定された耕作権の相続税評価額を定める方法を準用して計算されることになります。
農地に設定された耕作権の相続財産評価について
相続税基本通達で定める耕作権の評価方法は、純農地又は中間農地に設定された耕作権については、純農地又は中間農地の自用地(他人の権利が設定されていない土地)としての評価額に、相続税基本通達別表で規定している耕作権割合を乗じた金額とされています。
相続税評価基本通達別表で規定する耕作権割合は、0.5とされていますから、純農地及び中間農地に設定された耕作権の割合は、純農地又は中間農地の自用地としての評価額の半分ということになります。
一方、市街化周辺農地や市街地農地に設定された耕作権の価額について同通達は、その農地が転用された場合に通常支払われる離作料の額、その農地の付近にある宅地に設定された借地権の価額等を斟酌して定めると規定されています。
原野に設定された賃借権の相続財産評価について
原野に設定された賃借権の相続財産評価は、農地に設定された耕作権の相続税評価方法に従うと、市街地の遠方にある純原野、及び純原野と市街地原野の中間に位置する中間原野については、その原野の自用地としての評価額の半分になります。
一方、市街地周辺原野や市街地原野に設定された賃借権の相続税評価は、その原野を宅地にする場合に、その賃借権に基づき土地を利用していた者に支払う補償金や、その原野の周辺の宅地に設定された借地権の価額等を斟酌して評価することになります。
なお、宅地に設定された借地権の相続税評価額は、路線価を用いて評価した宅地の自用地としての価額に、その土地が所在する区域の借地権割合を乗じた価額となります。この借地権割合は、都市化が進んだ地域では、敷地の自用地としての評価額の80%から90%と非常に高率になります。
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