我が国は公的年金制度が整っているため、現役時代にきちんと保険料を納付していれば一定の年齢に達した段階で年金が支給されるようになっています。
一方で公的年金とは別に、今は様々な金融機関等がいわゆる「年金保険」という商品を販売しています。これらはあくまでも公的年金を補完するものではありますが、老後の資産形成に敏感な人たちの間で人気を集めています。
これらの年金保険の中には、保険料の払い込みの結果支給される年金が相続の対象となる場合があります。そこで今回は年金保険についての基礎知識を押さえながら、年金と相続税の関係、特に相続税対策として人気のある変額年金保険の評価方法について重点的に見てみたいと思います。
~目次~
1.年金保険にまつわる基礎知識
遺産分割の際に、障害者であることで手続きが必要になるケースは、その障害者に“意思能力”がない場合です。つまり、障害者であっても、“意思能力”に問題がなければ、特に特別な手続きは必要ありません。例えば、医師の診断で知的障害者とされ意思能力がないとされているような場合には、該当することとなります。
(1)そもそも年金保険とは
年金保険とは、広い意味では「保険料の拠出が前提となる年金制度」のことです。ここには国民年金等の公的年金も含まれますが、通常は民間企業が運営する私的年金のことを指します。主に公的年金で足りない分の上乗せ支給という目的を担っており、老後の生活をより豊かに送りたいと考える人が契約して保険料を支払い、一定の条件のもとに年金というかたちで保険金を受け取るわけです。近年では国の財政不安から公的年金の将来を危ぶむ声も囁かれることから、以前に比べて注目されることが多くなっています。
年金保険は、年金の受け取り方法によって大きく「終身年金」「確定年金」「有期年金」の3つに分けることが出来ます。
終身年金は一生年金を受け取れます。ただし被保険者が亡くなれば年金はストップします。長生きすれば非常にお得になりますが、逆に早く亡くなってしまうと「支払った額よりも受け取る額の方がはるかに低い」(=元本割れ)ということにもなりかねません。保険料は3つの中で最も高いです。
確定年金は「10年」「15年」のように定められた期間だけ年金を受け取れます。もし仮にその間に被保険者が亡くなったとしても受取人や相続人は必ず年金を受け取ることが出来ます。つまり掛け捨てにはならず、原則的に元本割れすることもありません。
有期年金は確定年金同様に定められた期間だけ年金を受け取れますが、被保険者が亡くなるとそれ以降は支給されません。もし仮に早く亡くなってしまうと、終身年金同様に元本割れになってしまいます。保険料は3つの中で最も安いです。
(2)「定額年金保険」と「変額年金保険」
年金保険にはまた「定額年金保険」というものと「変額年金保険」というものが存在します。前項の「終身年金」「確定年金」「有期年金」という3つの分類はあくまでも「受け取り方」による違いになりますが、定額年金保険と変額年金保険の違いは「保険会社における払い込まれた保険料の運用方法」の違いです。
定額年金保険は払い込まれた保険料が保険会社の「一般勘定」で運用されます。一般勘定というのは言わば保険会社が保険料を入れる財布のようなもので、年金保険に限らず他の保険で払い込まれた保険料等も合同して一括で運用されます。もしも保険会社が運用に失敗してもその負債は保険会社が負うことになっているので、契約者が損をすることはありません。つまり契約者にとっては「契約した時点で将来受け取れる年金額が確定している」ということになります。
これに対して変額年金保険は別名「投資型年金保険」とも呼ばれ、払い込まれた保険料の運用成果によって将来受け取れる年金額などが変動します。他の保険料と同じ財布で管理をするわけにはいかないので特別勘定という財布で運用されます。ひと言で言えば「ハイリスク・ハイリターン」な保険で、場合によっては年金額が当初の目論見よりも減少してしまうこともあり得ます。
どちらが年金保険として優れているかは一概には言えません。それぞれ一長一短があるので、特徴をよく理解した上で選択する必要があると言えるでしょう。
2.年金保険と相続の関係
相続税対策として最も活用されることの多い保険は今も昔も生命保険です。生命保険は「500万円×相続人の数」の範囲内で非課税になるからです。
そして年金保険も生命保険同様、相続税対策として使えることがあります。自分(被相続人)が亡くなった後でも受取人や相続人が引き続いて受け取れるタイプの年金もあるからです。
(1)相続に関係する3つの年金保険
年金保険の中には、被相続人が亡くなった後に遺族等の相続人が引き続いて年金を受け取れるタイプのものも存在します。最もわかりやすいのが冒頭に紹介した3つの年金保険の中の確定年金です。確定年金は被保険者が亡くなったとしても一定期間は受取人や相続人が年金を受け取れます。
終身保険と有期保険は原則として「被保険者が生きている限り年金が支給される」(=亡くなれば止まる)というタイプの年金ですが、「保証期間付終身年金」「保証期間付き有期年金」というものは別です。この2つは「始めの10年~15年の間に被保険者が死亡しても受取人や相続人に保証期間の終了までは年金を支払う」というタイプの年金です。
つまり被相続人が亡くなった後に保証期間付終身年金、保証期間付有期年金、確定年金の3つの年金を受け取る場合、相続財産としてどのように評価されて相続税に反映されるのかを考えておく必要があるというわけです。
(2)変額年金保険を使った相続税対策は取りにくくなっている
実はかつて、保証期間付終身年金、保証期間付有期年金、確定年金の3つの中でも特に変額年金保険は相続税対策として大いに利用されていた時代がありました。というのも、相続や遺贈、贈与時における生命保険契約に関する年金受給権の評価方法について定めた相続税法第24条の規定が相続人にとって非常に有利な仕組みになっていたからです。しかし平成22年税制改正において年金受給権の評価方法が大きく改正されています。
現行の相続税法第24条では「有期定期金」「無期定期金」「終身定期金」の3つについて評価方法が定められています。
有期定期金とは「向こう15年間に渡って毎年100万円ずつ」などのように一定期間に渡って金銭を受け取れる権利のことを指します。有期定期金の相続税評価は、以下の3つのうち最も大きい金額になります。
・解約返戻金の金額
・定期金の代わりに一時金で受け取れる場合は一時金の金額
・1年あたりの平均額×残存期間に応ずる予定利率による複利年金原価率
次に無期定期金とは「永久に毎年100万円ずつ」のような権利です。現実にはほぼ存在しないでしょうが、無期定期金の相続税評価は以下の3つのうち最も大きい金額になります。
・解約返戻金の金額
・定期金の代わりに一時金で受け取れる場合は一時金の金額
・1年あたりの平均額×予定利率
最後に終身定期金ですが、これは「亡くなるまでずっと毎年100万円」のような権利です。被保険者と被相続人が同じ場合、相続人は何も相続することが出来ないので評価の対象にはなりません。終身定期金の相続税評価は以下の3つのうち最も大きい金額となります。
・解約返戻金の金額
・定期金の代わりに一時金で受け取れる場合は一時金の金額
・1年あたりの平均額×平均余命に応ずる予定利率による複利年金原価率
もし仮に自身が相続人として年金受給権を相続して年金を受け取っている場合、まずは有期定期金、無期定期金、終身定期金のいずれに該当するかどうかを見極めます。その上でそれぞれに定められた3つの金額を算出して相続財産評価をするようにしましょう。複利年金原価率は国税庁、平均余命は厚生労働省のサイトでそれぞれ確認することが出来ます。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。
なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問い合わせ→記事内容に関するお問い合わせ」よりお問合せ下さい。
但し、記事内容に関するご質問や問い合わせにはお答えできませんので予めご了承下さい。