個人年金保険などの給付型保険と呼ばれるものは、一定の期間、掛金や保険料を納めることで定期金を受け取ることができます。そのため、もしこの保険の契約者が被相続人だった場合は、相続の対象となります。
一般的にこういった保険については、被保険者が保険料を負担し、かつ受取人も被保険者です。そのため、この保険の権利を相続した場合は、相続人には相続税が課せられることになります。課税対象額(評価額)は相続税法第24条に規定されている通り、契約内容や受取方法によって違っていますが、いずれにせよ、多くの場合は数年間かけて分割で受け取るほうが、税金を節約することができます。
このとき、もしこの保険の「保険金の負担者」と「保険金の受取人」が違った場合はどうなるのでしょうか?
定期金受取人以外の者が掛金又は保険料を負担している場合
給付型保険の定期受取人ではない人が保険料を払っている場合を考えてみましょう。たとえば、親が子供のために個人年金保険を組んでいたとします。この場合、保険料を負担しているのは親で、被保険者及び保険金の受取人が子供になります。
このとき、親が亡くなって相続開始された場合でも、この保険は相続税の対象にはなりません。なぜなら、この保険は親が亡くなったことによって譲渡されることになったものではなく、むしろ親が生きている間に子供に譲ると決めていたものだからです。つまり、この保険は相続ではなく贈与したものとみなされて、相続税の対象から外されることになるわけです。(もちろん贈与ですので、贈与税が課せられることになります)
同じような考え方で、もし子供が自分自身で保険料を支払っていた場合に課税されるのは、所得税になります。(もちろんこの場合は、相続は一切関係なく、定期金受取時に一時所得として扱われることになります)
なお、ここでもし、親が支払っていた保険料を、途中から子供が支払うようになった場合はどうなるでしょうか? この場合、相続開始前までに支払った保険料の中で、親が支払った金額の割合で課税額が決まります。その保険の贈与税額を評価した上で、その評価額のうちで、親が支払った金額の割合相当の評価額が、「贈与税」の対象として課税されるのです。
念のため、まとめておきます。
1. 親が受取人 + 親が負担
相続開始で子が定期金を受け取る権利を相続すると、相続税が課税される。
2. 子が受取人 + 親が負担
相続開始に関係なく、子が受け取った定期金に贈与税が課税される。
3. 子が受取人 + 子が負担
相続開始に関係なく、子が受け取った定期金に所得税が課税される。
4. 子が受取人 + 親が7割、子が3割負担
相続開始に関係なく、子が受け取った定期金の7割に贈与税、3割に所得税が課税される。
5. 親が受取人 + 親が7割、子が3割負担
相続開始で子が定期金を受け取る権利を相続すると、相続した権利の評価額の7割に相続税が課税される。また、子が受け取った定期金の3割に所得税が課税される。
・参考URL
定期金受取人以外の者が負担した掛金又は保険料