引湯権とは、温泉がわき出る土地の所有者や温泉を利用する権利を有する者から温泉をわけてもらう権利のことをいいます。この引湯権を相続した場合には、その権利も相続税課税対象財産になります。では、引湯権はどのように相続財産として評価されるのでしょうか。以下では、この問題について考えます。
引湯権の相続財産評価基準について
相続財産評価通達第2章第9節(80)では、引湯権の相続財産評価について規定しています。それによると、引湯権の相続財産評価は、まず、「鉱泉地の評価額」又は「住宅、別荘等の鉱泉地の評価額」又は「温泉権の評価額」に、鉱泉地の勇水量に対する引湯権の対象となる分湯量の割合を乗じた価額を求めます。
この価額から、引湯の条件に応じて、100分の30の範囲以内で定める相当の金額を控除します。控除後の金額が、引湯権の相続税評価額となります。よって、引湯権の評価額は、引湯の条件により、鉱泉地の価額等に温泉全体の勇水量に対する引湯権の分湯量の割合を乗じた金額の、70%~100%となります。
別荘、リゾートマンション等に係る引湯権の財産評価について
引湯権の相続財産評価は、原則として、上記の方法により行います。しかし、別荘やリゾートマンションに係る引湯権で、通常取引される価額が明らかなものについては、納税者の選択により、上記の原則により評価した評価額と、課税時期の通常の取引価額のいずれかを、評価額とすることができるとされています。
引湯の条件とは
引湯権の相続財産評価は、引湯の条件により最大で30%減額されます。その引湯の条件とは、次のようなものが該当します。それは、例えば、引湯権を利用して温泉を使用する場所が湯元から遠く離れているため、温泉の温度が下がってしまうことや、別段の契約により引湯権による温泉の利用に制限が設けられていることなどです。
鉱泉地、住宅、別荘等の鉱泉地、温泉権の評価額について
鉱泉地とは、温泉(鉱泉)の湧水口や、温泉を溜め置くための設備等湧水口の維持に必要な施設の敷地のことを言います。この鉱泉地の相続財産評価額は、原則として、その固定資産税評価額に、地域の実情に応じて国税長官が定める倍率を乗じた価額になります。
住宅、別荘等の鉱泉地の評価額は、本来の鉱泉地の評価額から、その価額の100分の30の範囲内で定める相当と認める価額を控除した価額とします。なお、鉱泉地の所有者が、旅館、料理店等の営業者以外である場合には、当該鉱泉地は、住宅、別荘等の鉱泉地に該当します。
温泉権の評価額は、その温泉権の設定条件に応じて、温泉権の売買実例価額、精通者意見価格等を斟酌して決定された価額となります。また、温泉権が設定されている鉱泉地の評価額は、本来の鉱泉地の評価額から、温泉権の評価額を控除した価額となります。