ここでは、被相続人が持分会社の事業に携わっていて、相続財産に持分会社の出資持分が含まれている場合の相続税法上の評価方法について説明します。
1.持分会社とは
平成18年に会社法が施行されるまで、会社の形態は、商法に定める株式会社、合資会社、合名会社のほか、有限会社法に定める有限会社のあわせて4つの形態がありました。会社法の施行によって、有限会社は株式会社に統合され、新たに設立することはできなくなりました。合資会社、合名会社は、会社法施行に合わせて創設された合同会社とあわせて、持分会社と総称されるようになりました。
持分会社と株式会社の最大の違いは、所有と経営の関係です。株式会社は、所有と経営が分離しています。株主は株主総会で議決権を行使することはあっても、日常的な会社の経営は経営者に委任しています。持分会社は、所有と経営が分離しておらず、出資者が自ら日常的に会社の経営に携わることになります。
持分会社の出資者が死亡したときは、会社法第607条第1項第3号の規定によって、出資者から外れることとされています。ただし、出資持分の相続について会社の定款に別段の定めがあるときは、相続によって持分を承継することができます。相続財産に持分会社の出資持分がある場合は、その会社の定款で出資持分が相続できるかどうかを確認する必要があります。
2.持分の払戻しを受ける場合
持分会社の出資者から外れて出資持分の払い戻しを受ける場合は、持分会社の出資の価額は持分の払戻請求権として評価します。その価額は、相続税の課税時期、つまり被相続人が亡くなった時点において、持分会社の資産から負債を差し引いた金額に、持分を掛けた金額となります。この場合、持分会社の資産は財産評価基本通達の規定によって評価した金額を使用します。
3.相続によって持分を承継する場合
相続によって持分会社の出資持分を承継する場合、その価額は財産評価基本通達194の規定によって、取引相場のない株式の評価方法に準じて評価することと定められています。つまり、類似業種比準価額、純資産価額もしくは両者の併用、または配当還元価額で評価することになります。出資割合が大きいなど、その会社を支配しているか否か、あるいはその会社の規模によって定められた方法で評価します。
相続によって持分会社の出資持分を承継した場合は、一定の手続きを経て、相続人が持分会社の出資者に名を連ね、経営に携わることになります。
【財産評価基本通達】(特定の評価会社の株式)
(持分会社の出資の評価)
194 会社法第575条第1項に規定する持分会社に対する出資の価額は、178≪取引相場のない株式の評価上の区分≫から前項までの定めに準じて計算した価額によって評価する。(昭59直評7外・平18課評2-27外改正)
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。
なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問い合わせ→記事内容に関するお問い合わせ」よりお問合せ下さい。
但し、記事内容に関するご質問や問い合わせにはお答えできませんので予めご了承下さい。