ここでは、被相続人が採石権を持っていた場合の、採石権の相続税法上の評価方法について説明します。
1.採石権とは
採石権とは、他人の土地において契約によって定めた範囲内で岩石や砂利などの採取ができる権利をいいます。採石権を設定するとき、その土地に地上権や永小作権がある場合は、それらを所有する人の承諾を得る必要があります。採石権の存続期間は契約によって20年以内の期間を定めることとされています。ただし、20年以内の期間で更新することができます。
2.採石権の相続税評価
財産評価基本通達では、採石権の価額は、鉱業権および租鉱権の評価方法を準用して評価することとされています。採石権のある採石場について、採石権を持つ人が設置した固定資産および流動資産と一括して評価します。つまり、採石のための建物、構築物、機械装置、設備、備品、資材および採取された岩石や砂利などをすべて含めて評価することになります。権利自体を単独で評価するというよりは、採石業のための財産も含めて評価するという考え方によるものです。
採石権は、採石場が操業しているか否かによって、次のとおり評価の方法が分かれます。
(1) 操業している場合
採石場が操業している場合は、次の算式で計算した価額で評価します。
A×n年に応ずる基準年利率による複利年金現価率
A:平均所得((平常の営業状態において、課税時期以後のn年間に毎年実現することが予想される1年間の純益+支払利子+償却額)×0.5-企業者報酬の額)
n年:採石権の存続期間(延長が見込まれるときは、その延長見込年数を加算します。)
(2) 休業しているものの近いうちに所得を得る見込みがある場合
採石場が休業しているものの近いうちに所得を得る見込みがある場合は、次の算式で計算した価額で評価します。
A×(m年にn年を加えた年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率-m年に応ずる基準年利率による複利年金現価率)-m年間に投下する各年の資本の額の基準年利率による複利現価の額の合計額
Aおよびn年:(1)の場合と同じ
m年=課税時期から休業している採石場が所得を得ることができる年までの年数(1年未満の端数は切り捨て)
(3) (1)または(2)の方法で算出した採石権の価額が、その採石場の資産の総額に満たない場合
採石権の価額は、その採石場の資産の総額によって評価します。
(4) 休業していて近いうちに所得を得る見込みがない場合
その採石場が廃止された場合に、その採石場の資産のうち他に転用可能なものの価額の合計額で評価します。
(採石権の評価)
160 採石権の価額は、155≪評価単位≫から前項までの定めを準用して評価する。