農地等に係る納税猶予の特例の適用を受けるためには、被相続人の農業経営を相続等によって農地等を取得した者(農業相続人)が承継する必要があります。では、農業相続人が未成年者で、その者の親族が農業経営を引き継ぎ、かつ、農業所等の確定申告を行う場合、本特例の適用はどうなるのでしょうか。以下で解説します。
未成年者が農業相続人となった場合の農業所得の申告とは
ある質問者から、国税庁に対して、未成年者が農業相続人となり、農地等の相続税の納税猶予の特例を受けており、当該農地から生じる農業所得の確定申告を農業相続人である未成年者の親族が行っている場合、納税猶予の特例の適用上問題はないのか、という照会がなされました。
この照会に対して、国税庁は、以下のように回答しています。
相続又は遺贈によって農地等を取得した相続人が未成年者に該当し、かつ、その未成年者に代わり、その未成年者と住居及び生計を一にする親族が、その未成年者が取得した農地等につき、農業経営を行う場合には、当該未成年者が農業経営を行うものとして取り扱っています。
この場合において、未成年者が取得した農地等について納税猶予の特例の適用を受ける場合には、未成年者が所得税の農業所得の申告を行わなければならないという要件はないことから、相続税の納税猶予の特例の適用上は、問題ありません。
上記の照会及び回答が、国税庁の質疑応答「未成年者が農業相続人となった場合の農業所得の申告」となります。
未成年者が納税猶予の特例を受けるために重要な国税庁の見解
国税庁が上記の質疑応答で示した見解によると、農地等に係る相続税の納税猶予の特例の適用を受ける未成年者が取得した農地等で、未成年者が住居と生計を一にする親族が農業経営を行い、かつ、農業所得の確定申告を行う場合でも、特例の適用を受ける未成年者が被相続人が営んでいた農業を承継したものとみなされます。
そして、このことによって、未成年者が農業所得の確定申告を行わないということが、納税猶予特例の取消(確定)事由に該当しないことになり、当該特例の適用は継続されるということになります。
農地等を取得した場合に、相続税の納税猶予特例の適用を受けるためには、被相続人が営んでいた農業経営を、農地等を取得した者が承継する必要があります。
この考えからすると、農地を取得した者が幼少の未成年者である場合、その幼少の者が農業経営を行えるわけがありませんから、幼少の未成年者が農地等の相続税の納税猶予特例の適用を受けることは不可能なはずです。
しかし、上記の国税庁の見解によると、未成年者と住居及び生計を一にする親族が農業経営及び農業所得の確定申告を行う場合でも、未成年者が取得した農地等で未成年者が農業経営を行うものとみなして、納税猶予特例を適用するとしています。
よって、上記の質疑応答の見解は、未成年者が取得した農地等について、未成年者が納税猶予の特例を受けるために、非常に重要な役割を果たすものと言えます。
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