温泉権とは、特定の法律で決められたものではない慣習法ですが、「湧出した鉱泉地の温泉を優先的に利用できる」権利のことで、裁判所の判例でも認められています。温泉という「湧出する液体」自体は湧水の一種なので、「温泉の湧出口の土地の所有者」が権利を持つ場合もありますが、温泉自体が「観光資源や医療への活用が可能」な個別の物質として扱うことができるため、それを優先的に使用する権利を温泉の湧出口の土地を保有する権利とは別物として扱うことが可能になっています。
この権利は、通常の物権と同様に取引の材料として扱うことが可能なことで、資産としてみなされて税法上では相続税などの評価対象となります。
温泉権が設定されている鉱泉地
温泉権が設定されている鉱泉地は、その土地の歴史的背景や温泉掘削時の契約等において、鉱泉地の土地の所有権とは別に温泉権が設定されている鉱泉地のことを指します。
温泉権が設定された鉱泉地の場合、鉱泉地が温泉権によって様々な制約を受ける部分があり、その点で税制上の優遇措置が認められています。
温泉権が設定されている鉱泉地の評価
税制上で温泉権が設定されている鉱泉地の評価は、その鉱泉地をまず「財産評価総則基本通達第2章69:鉱泉地の評価」もしくは「財産評価総則基本通達第2章75:住宅、別荘等の鉱泉地の評価」にて価額評価を行います。その上でその価額評価分から「財産評価総則基本通達第2章78:温泉権の評価」を引き算した価額を、税制上での温泉権が設定されている鉱泉地の評価価額として扱います。
【財産評価総則基本通達第2章77】(温泉権が設定されている鉱泉地の評価)
温泉権が設定されている鉱泉地の価額は、その鉱泉地について69≪鉱泉地の評価≫又は75≪住宅、別荘等の鉱泉地の評価≫の定めにより評価した価額から次項の定めにより評価した温泉権の価額を控除した価額によって評価する。(平12課評2-4外改正)【財産評価総則基本通達第2章69】(鉱泉地の評価)
鉱泉地の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。ただし、湯温、ゆう出量等に急激な変化が生じたこと等から、次に掲げるところにより評価することが適当でないと認められる鉱泉地については、その鉱泉地と状況の類似する鉱泉地の価額若しくは売買実例価額又は精通者意見価格等を参酌して求めた金額によって評価する。(昭41直資3-19・平12課評2-4外改正)(1) 状況が類似する温泉地又は地域ごとに、その温泉地又はその地域に存する鉱泉地の売買実例価額、精通者意見価格、その鉱泉地の鉱泉を利用する温泉地の地価事情、その鉱泉地と状況が類似する鉱泉地の価額等を基として国税局長が鉱泉地の固定資産税評価額に乗ずべき一定の倍率を定めている場合 その鉱泉地の固定資産税評価額にその倍率を乗じて計算した金額によって評価する。
(2) (1)以外の場合 その鉱泉地の固定資産税評価額に、次の割合を乗じて計算した金額によって評価する。
(注) 固定資産税評価額の評定の基準となった日とは、通常、各基準年度(地方税法第341条≪固定資産税に関する用語の意義≫第6号に規定する年度をいう。)の初日の属する年の前年1月1日となることに留意する。
【財産評価総則基本通達第2章75】(住宅、別荘等の鉱泉地の評価)
鉱泉地からゆう出する温泉の利用者が、旅館、料理店等の営業者以外の者である場合におけるその鉱泉地の価額は、69≪鉱泉地の評価≫の定めによって求めた価額を基とし、その価額からその価額の100分の30の範囲内において相当と認める金額を控除した価額によって評価する。(平12課評2-4外改正)【財産評価総則基本通達第2章78】(温泉権の評価)
前項の「温泉権の価額」は、その温泉権の設定の条件に応じ、温泉権の売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する