漁業権とは、漁業法において「一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利」と規定されています。一定の水面とは、通常、岸から3kmないし5kmまでの水面をいいます。漁業権は、定置網を仕掛けるための定置漁業権、養殖業を営むための区画漁業権、地元漁民が共同で利用するための共同漁業権からなります。
1.漁業権の評価方法
漁業権の譲渡や貸付は原則としてできません。したがって、異動のために金額による評価が必要となるのは、相続や法人の合併によるときです。財産評価基本通達では、漁業権を独立した財産として評価するのではなく、その漁業権者の営業権に含めて評価すると定められています。
2.営業権の評価方法
営業権は次の式によって算出します。
平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額×0.05=超過利益金額
超過利益金額×営業権の持続年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率=営業権の価額
平均利益金額:前年以前3年間における所得の合計額の3分の1 に相当する金額
(その金額が前年の所得の金額を超える場合には、前年の所得の金額)
この場合における所得は、事業所得をいいますが、次に掲げるものは、なかったものとみなします。
● 非経常的な損益の額
● 借入金等に対する支払利子の額及び社債発行差金の償却費の額
● 青色事業専従者給与額または事業専従者控除額
標準企業者報酬額:平均利益金額の区分に応じて別途定められた算式により計算した金額
総資産価額:相続税評価額で評価した企業の総資産の価額
営業権の持続年数:原則として10年とします。
基準年利率、複利年金現価率:国税庁によって定められた値を使用します。
営業権とは、企業が持つ好評、愛顧、信任、顧客関係その他の要因によって期待される将来の超過収益力を数値化したものをいいます。
超過収益力は過去の利益から推測して求めますが、将来の収益減少の危険性は皆無ではないので、それを見越して0.5を前年までの利益に掛けた値を算出します。その値に企業者の報酬に相当する価額と企業の資産の運用益を差し引いたものを超過利益金額としています。この超過利益金額から利息に相当する部分を差し引いたものが、営業権となります。
標準企業者報酬額の算式は、平均利益金額が1億円以下の場合「平均利益金額×0.3+1,000万円」と定められています。平均利益金額が5,000万円以下の場合は、総資産価額の多い少ないにかかわらず、超過利益金額はマイナスとなり、営業権の価額は算出されないことになります。
(漁業権の評価)
163 漁業法(昭和24年法律第267号)の規定に基づく漁業権の価額は、営業権の価額に含めて評価する。(昭41直資3-19改正)