相続税の課税価格を決めるためには、財産を評価しなければいけません。その場合の評価方法は、相続した財産の種類によって様々な方法がありますが、原則は「時価」で評価することになっています。つまり、(現金や預貯金であれば問題ありませんが)貴金属や美術品などの場合は、相続開始した時期の時価を算出する必要が出てきます。
海外の財産を相続した場合でも、基本的な評価の方法に違いはありません。現金や預貯金はその価値のままで、それ以外の不動産や動産などは、財産評価基本通達に定められた方法やそのときの時価をもとに評価します。
しかし、海外の財産の場合は、そのままでは現地通貨での価額になってしまいますので、日本円へ換算する必要があります。
この場合、どう換算するべきでしょうか?
海外の相続財産の評価
海外の現地通貨で算出された評価額を日本円へ換算する方法についても、財産評価基本通達に規定されていますので、それに従うことになります。ニュースで報道されている為替相場とは少し違っていますので、気を付けなければいけません。
(1)日本円への換算
海外の財産について、現地通貨での評価額を出した後、それを日本円に換算するには、相続人の取引金融機関の相続開始日におけるTTB(対顧客直物電信買相場)をもとに行います。このとき、相続開始日が休日だった場合は前日以前の直近の営業日に公開されたTTBを使うことになっています。
なお、海外の債務を相続した場合のその債務の評価については、TTS(対顧客直物電信売相場)を使って評価します。
※TTBは、各金融機関が定める為替レートで、金融機関が海外通貨で日本円を売る(利用者から見れば、海外通貨を日本円に両替する)場合に適用されるレートです。外国為替市場での銀行間取引の為替レートから為替手数料を差し引いた金額になります(TTSは逆に銀行間取引の為替レートに為替手数料を加えた金額になります)。
(2)為替予約がある場合の相続税評価
上述の通り、海外の財産を評価する場合、相続開始日のTTBを使うことが原則です。しかし、外国為替取引の場合は、「為替予約」を行っている場合があります。その場合は、もちろん相続開始日のTTBを参照することはなく、その「予約した為替レート」で評価することになります。
なお、「為替予約」というのは、為替取引における為替売買取引の1つで、将来の一定の期日や期間に取引を実行すると取り決めた上で、事前にそのときの為替レートも取り決めておくというものです。
【参考】
国税庁 財産評価基本通達 第1章