特許権の相続税評価は、将来受ける予定の収益(以下、補償金といいます)の額をもとに計算します。しかし、将来受ける予定の補償金の額が確定していない場合もあります。財産評価基本通達142では、将来受ける予定の補償金の額が確定していない場合に、その額を推算する方法が定められています。
1.特許権の評価方法
特許権は発明を行った発明者を保護するものです。発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいい、高度でないものは実用新案の対象になります。特許権を持つ者(特許権者)は、特許を利用した製品の製造、販売、使用、つまり特許の実施を業として行う権利を独占して保有します。特許権者は、自ら特許を実施するか、他人に特許を実施させて相応の対価(補償金)を受け取ることで収益を得ることができます。
特許権は相続することができ、相続税の課税対象にもなります。財産評価基本通達では、相続や事業承継のときに必要となる、特許権の価額の評価方法が定められています。
他人に特許を実施させている場合においては、将来受ける予定の補償金の額を見積もり、複利計算で現在価値に割り引いた額で評価することとされています。具体的には、受ける予定の補償金を複利現価率で割り引いた額を、1年目、2年目と年ごとに特許権の存続期間が終了する年まで求めて、それらを合計した額を特許権の評価額とします。
自ら特許を実施している場合は、特許権を個別に評価するのではなく、その事業の営業権に含めて評価することとされています。
2.将来受ける補償金の額が確定していない場合の評価方法
他人に特許を実施させている場合の特許権の価額を評価するとき、将来受ける予定の補償金の額が確定していない場合は、その額を推算します。
まず、課税時期より前、つまり特許権者が生前の相当の期間内に受け取った補償金のうち、その特許権の内容に照らして経常的な収入である部分の額を求めます。次に、この額をもとに、その特許権が今後必要とされるのか、その需要はどの程度持続するのかといったことも考慮して、将来受ける予定の補償金の額を推算します。特許の需要や持続性を考慮するのは、いくら優れた発明であっても、特許を利用した製品の製造、販売、使用などによって収益を得ることができなければ、経済的な価値を評価することができないからです。
将来受ける予定の補償金の額が推算できれば、それをもとに、複利計算で現在価値に割り引いた価額によって特許権を評価します。
【財産評価基本通達】
(補償金の額)
142 140≪特許権の評価≫の定めによって特許権の価額を評価する場合において、その将来受ける補償金の額が確定していないものについては、課税時期前の相当の期間内に取得した補償金の額のうち、その特許権の内容等に照らし、その特許権に係る経常的な収入と認められる部分の金額を基とし、その特許権の需要及び持続性等を参酌して推算した金額をもってその将来受ける補償金の額とする。