相続税の納税猶予特例の適用を受けている農地について、地上権等の使用収益権を設定した場合には、納税猶予の確定事由に該当し、猶予されていた相続税額の納税が必要になるのが一般的です。では、特例対象農地に空中電線路用の地役権を設定した場合には、当該特例はどうなるのでしょうか。以下で解説します。
相続税の特例農地の一部について設定された地役権に関する質問
相続税の特例の適用を受けている農地の一部について、X株式会社が上空に電線路を設置するために、地役権が設定し、その対価を当該農地の所有者が受けた場合、このことは、納税猶予特例の確定事由に該当するのかしないのか、という質問が国税庁に対してなされました。
なお、当該地役権の設定が納税猶予特例の確定事由に該当した場合には、農地の所有者は、
相続税の納税特例の適用が取り消されて、猶予されていた相続税の納税が必要になります。
相続税の特例農地の一部について設定された地役権に関する質問に対する回答
この質問に対して、国税庁は、当該地役権の設定は、納税猶予特例の確定事由に該当しないと回答しました。
上記の質問及び回答が国税庁の質疑応答「相続税の特例農地等の一部について地役権が設定された場合」となります。
相続税の納税猶予特例の確定事由の例外について
国税庁が公表している「タックスアンサー」№4147「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」によると、相続税の納税猶予特例を受けている農地について、次に掲げる事由があった場合には、納税猶予の確定事由に該当し、農地等納税猶予税額を納付しなければならないと規定しています。
1. 特例農地等について譲渡、贈与、転用を行った
2. 地上権、永小作権、使用貸借による権利、賃借権等を設定した
3. 地上権、永小作権、使用貸借による権利、賃借権等の権利が消滅した
4. 耕作を放棄した
なお、区分地上権を設定した場合で、当該権利の設定後、引き続き対象農地の耕作を継続する場合には、農地等納税猶予は継続します。
また、地上権、使用貸借権、賃借権等を設定した場合でも、一時的に道路用地等に貸付ける場合や農用地利用集積計画に基づくもので、一定の要件を満たす特定貸付に該当する場合にも、納税猶予が継続されます。
このように、区分地上権を設定した場合や、道路用地等として貸付けるために一時的に
地上権等を設定した場合については、例外的に、納税猶予特例が継続されることが規定されているわけですから、上記の質疑応答においても、このことが斟酌されたものと推察できます。