被相続人に支給されることが決まっていた退職手当金や功労金などについても、被相続人の死亡によってその権利が相続人に相続されます。そのため、それら退職手当金等についても相続税の課税範囲に含まれることになります。ただし、それら退職手当金等については、勤めていた企業から支給されるものやその他の団体から支給されるものなど多岐にわたります。
ここでは、それら退職手当金等に含まれるものを詳しく解説いたします。
1.相続税の課税対象となる退職手当金等
被相続人の死亡によって相続人が受ける金品が退職金等に該当するかどうかは、退職給与規定やそれに準ずる規定などに基づいて支給されるものが基本になり(規定などがない場合、被相続人と同様の地位の人が受け取る金額をもとに勘案されます)、そのものの名義は関係なく、実際に被相続人に退職手当金等として支給される金品が該当します。
1-1.相続税法施行令に定められている退職手当金等に含まれるもの
実際には、務めていた企業から退職給与規定に基づいて支給されるもの以外にも、個人で契約するなどしてその他の団体から支給されるものなど、退職手当金等に該当するものは多岐にわたっています。まずは、どんなものが退職手当金等に含まれるのか、相続税法施行令に定められているものを紹介していきましょう。
1.国家公務員共済組合法の規定により支給を受ける一時金または年金
2.地方公務員等共済組合法の規定により支給を受ける一時金または年金
3.私立学校教職員共済法の規定により支給を受ける一時金または年金
4.確定給付企業年金法に規定されている確定給付企業年金
5.確定給付企業年金の中途脱退時に企業年金連合会から支給を受ける一時金
6.厚生年金基金脱退、解散時に存続連合会から支給を受ける一時金
7.確定拠出年金法に規定されている企業型年金規約または個人型年金規約に基づいて支給を受ける一時金
8.法人税法に規定されている適格退職年金契約に係る信託、生命保険の契約に基づいて支給を受ける年金または一時金
9.独立行政法人勤労者退職金共済機構や所得税法施行令に規定されている特定退職金共済団体が行う退職金共済が契約規定する退職金共済契約または「これに類する契約」に基づいて支給を受ける年金または一時金
10.独立行政法人中小企業基盤整備機構が規定している共済契約に基づいて支給を受ける一時金
11.独立行政法人福祉医療機構の締結した社会福祉施設職員等退職手当共済法に規定されている退職手当共済契約に基づいて支給を受ける一時金
2.相続税基本通達における「これに類する契約」の意義
先に紹介した相続税法施行令に定められている「退職手当金等に含まれるもの」は、様々な法律や機構などが規定しているものが記載されており、おおむねはっきりと特定できるものですが、9.に「これに類する契約」という曖昧な記載があります。
この「これに類する契約」について、相続税法基本通達第3条27に規定されていますので、解説します。
相続税法基本通達第3条27に規定されている「これに類する契約」というのは、企業が「退職手当金等を支給する事業を行う団体」に掛け金を納付して、その団体が退職手当金を支給する契約のことを示しています。つまり、退職手当金等を支給するのは企業や法律で規定された団体などではない第三者機関や団体、企業など広範にわたります。この規定によって、将来提供されるであろう新たな共済サービスなども相続税の課税対象に含まれることになります。
【参考】
国税庁 相続税法基本通達3-27 (「これに類する契約」の意義)