財産評価基本通達では、取引相場のない株式の評価方法を定めています。一定以上の議決権割合を持っているなど、発行会社を支配している場合は、原則的評価方式と呼ばれる方式によって評価します。原則的評価方式は、会社の規模に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式または両者を併用する方式から選択して評価するものです。
1.類似業種比準方式
類似業種比準方式は、事業内容が類似する上場企業の株価をもとに取引相場のない株式を評価するものです。財産評価基本通達によって定義された会社区分のうち「大会社」で適用されます。また、「中会社」、「小会社」では、純資産価額方式との併用で適用することができます。
算式は次のとおり定められています。利益の額を重視するために、利益の額は3倍します。
A×{(b/B+c/C×3+d/D)/5}×E×1株当たりの資本金等の額/50円
A:類似業種の株価
B:類似業種1株あたりの配当金額
C:類似業種1株あたりの利益金額
D:類似業種1株当たりの純資産価額(帳簿価額)
b:評価会社1株当たりの配当金額
c:評価会社1株当たりの利益金額
d:評価会社1株当たりの純資産価額(帳簿価額)
E:斟酌率(大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5)
2.類似業種の株価
類似業種の株価は国税庁によって算定されており、月ごとの株価と前年平均株価が公表されています。
類似業種比準方式で使用するときは、国税庁が公表している値のうち、課税時期の属する月以前3か月間の各月の値のうち最も低いものとすることが定められています。ただし、前年平均株価を使用することもできます。
相続税での財産評価において、上場株式は課税時期の最終価格と過去3か月の各月の平均株価のうち最も低いもので評価します。類似業種の株価についても、上場株式の評価方法に合わせて、課税時期の属する月以前3か月間の各月の値のうち最も低いものとすると定めています。しかし、類似業種のほかの比準要素である配当金額、利益金額、純資産価額は、前年の値によって計算することから、株価についても前年1年間の平均値を使用することが選択できます。
類似業種の株価の計算は次のとおり行います。
金融商品取引所に上場するすべての会社について、業種目ごとに株式の毎日の最終価格を各月ごとに平均した額を計算します。ただし、上場して間もない会社や上場廃止予定の会社など、一定の条件に当てはまる会社は除外し、株価は1株あたりの資本金の額を50円に換算した値で計算します。
【財産評価基本通達】(類似業種)
(類似業種の株価)
182 180≪類似業種比準価額≫の類似業種の株価は、課税時期の属する月以前3か月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いものとする。ただし、納税義務者の選択により、類似業種の前年平均株価によることができる。
この場合の各月の株価及び前年平均株価は、業種目ごとにそれぞれの業種目に該当する上場会社(以下「標本会社」という。)の株式の毎日の最終価格の各月ごとの平均額(1株当たりの資本金等の額を50円として計算した金額)を基に計算した金額によることとし、その金額は別に定める。(昭47直資3-16・昭58直評5外・平18課評2-27外改正)