従業員が亡くなった場合、事業主が従業員のためにする一定の保険契約や共済契約から、従業員の相続人等が保険金を受け取った場合、その保険金には相続税又は贈与税が
課税されます。どのような保険契約や共済契約による保険金の受け取りに相続税がかかるのかは、相続税基本通達により規定されています。以下では、この規定等について解説します。
~目次~
退職金等に該当する生命保険契約に関する権利等とは
相続税法では、従業員が亡くなった場合に相続人等が受け取る退職手当金等のうちの一定のものが、相続財産として取り扱われることを規定しています。相続財産と取り扱われる退職手当金等を「みなし相続財産」といいます。
そして、「退職金等に該当する生命保険契約に関する権利等」(相続税基本通達3-38)とは、事業主が従業員のためにする一定の保険契約又は共済契約の契約上の地位(権利等)が、従業員の死亡により相続又は遺贈された場合、その権利を「みなし相続財産」とすることとした規定のことです。
みなし相続財産について
相続税法第3条第1項第2号では、被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金、その他これらに準ずる給与のうち一定のものは、相続又は遺贈により取得したものとみなす、と規定しています。
従って、相続税法第3条第1項第2号に該当する退職手当金等には相続税が課税されます。
これらの財産は、本来の相続財産ではありませんが、相続税法上のこの規定により相続財産とみなされますので「みなし相続財産」といいます。
雇用主が従業員のためにする保険契約等の権利は相続財産となる
雇用主が、従業員のために、保険契約や共済契約を締結する場合があります。相続税基本通達3-28では、雇用主が従業員のために締結した保険契約や共済契約のうちの一定のものについて、従業員が亡くなり、その契約上の地位(権利等)を相続人等が取得した場合には、それが「みなし相続財産」となると規定しています。
「みなし相続財産」に該当すれば、当然に相続税の課税対象となります。従って、相続税財産評価の方法に従って評価した価額を、課税遺産総額に含めなくてはなりません。なお、「みなし相続財産」には一定の控除額がありますので、その課税対象財産の計算方法は、通常の相続財産とは異なります。
雇用主が従業員のためにする生命保険契約等の権利で相続税がかかるもの
雇用主が従業員のためにする生命契約又は共済契約で、従業員が亡くなりその契約上の地位に相続や遺贈が生じた場合に相続税が課されるのは、次のような場合です。
(1) 従業員の配偶者やその親族を契約者とする生命保険契約や損害保険契約
(2) 従業員又はその者の配偶者その他の親族の有する財産を目的とする損害保険又は
共済契約
上記に該当する場合でも、保険契約又は共済契約一定期間内に保険事故が発生しなかった場合に、返還金その他これに準ずる金銭の支払いのないもの、いわゆる、掛け捨て保険契約等については、相続税の課税対象にはなりません。
雇用主が従業員のためにする生命保険契約等の権利の相続財産評価
雇用主が従業員のためにする生命保険契約又は共済契約で、従業員に相続又は遺贈が発生した場合に、その契約上の地位(権利)が相続税の課税対象となるには、その権利の相続財産評価は、生命保険契約に関する権利として時価によるものとなります。