住まいには、家屋だけではなく、庭木や塀、大きなお宅なら門や庭池といった付属施設がついていることがあります。また、電気やガス設備、給排水設備などがついている家屋は、ついていない家屋よりも資産価値が高くなります。ここでは、具体的に家屋の付属設備に対する相続税評価の出し方を見ていきましょう。
1.「付属設備」とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!家屋の付属設備とは、具体的には「家屋と構造上一体となっている設備」「門、塀等の設備」「庭園設備」の3つ。
「家屋と構造上一体となっている設備」には、屋根と一体型のソーラーパネルやテレビ設備、インターホン設備などの電気設備、給排水設備、屋内のガス設備や壁掛け用でない空調システム、スプリンクラー、エレベーターなど、家屋の効用を高める目的で設置された設備のことをいいます。ただし、業務用の電気設備や冷凍設備といった、特定の生産や業務に使うものや、ネオンサインやスポットライトのように装置として独立している性質が強いものは、家屋の評価には含みません。
「門、塀等の設備」には、門や塀はもちろん、外井戸やディスポーザー、焼却炉といった屋外じんかい処理設備なども含みます。
「庭園設備」とは、庭園を構成する設備のこと。庭木や庭石、あずまや、庭池などのことを指します。
家屋の付属設備の相続税は、この3つの場所ごとに評価をします。
2.「家屋と構造上一体となっている設備」の相続税評価
「家屋と構造上一体となっている設備」の評価について見ていきましょう。
「家屋と構造上一体となっている設備」と償却資産の見分け方は難しいものですが、「家屋と構造上一体となっている設備」は「家屋に取り付けられ、容易に取り外しができないもの」「家屋の効用を高めるもの」です。
同じ太陽光発電設備でも、太陽光パネルは取り外しができるので償却資産ですが、屋根材と一体になっているタイプのソーラーパネルは容易に取り外しができないので、家屋に含めます。
エアコンも、取り外しができるルームエアコンは償却資産ですが、壁や天井に埋め込まれている空調システムの場合は「家屋と構造上一体となっている設備」とみなされます。
そのほかにも衛生設備、ガス設備、消火設備など多くの設備があります。こうした家屋と構造上一体となっていて、家屋の効用を高めるような設備は、固定資産税では建物に含めて課税されるので個別の評価は必要がありません。ただし、ネオンサイン、投光器、スポットライト、電話機、電話交換機、タイムレコーダーは含みません。
3.「門、塀等の設備」の相続税評価
家屋の外にある門、塀、外井戸、屋外じんかい処理設備などは家屋と一体化しているわけではないので、固定資産税の評価には含まれていませんから、個別に評価していく必要があります。なお、屋外じんかい処理設備とは、発生したゴミを収集場所や施設などに運搬する前の中間処理設備のことで、圧縮装置やディスポーザー、焼却炉などがこれに当たります。
これらの付属設備は、設置後、時間がたつとともに劣化していくことから、だんだん資産価値が減少していきます。このだんだん減っていく価値のことを償却費といい、相続税評価の際は1年未満の端数は切り上げて1年で計算します。
門、塀等の付属設備の評価額は、再建築価額に建築時から課税時点までの償却費の総額または減価の額を引いた金額に70%をかけて求めます。再建築価額とは、課税時点で評価する付属設備を新築する場合に必要になる金額のことです。
門、塀等の設備の評価額は「再建築価額-新築から課税時点までの償却額×70%」で算出します。
4.「庭園設備」の相続税評価
庭木や庭石、あずまや、池といった庭園設備も家屋の評価には含まれていないので、相続時には個別に評価をする必要があります。これらは調達価格の70%が評価額です。
調達価格というのは、課税時に同じものを新たに作る際に必要になる金額のこと。庭木や庭石の価格だけでなく、搬入時の費用や設置費用なども含めた金額です。
具体的には、業者に庭を見せて「これと同じものを作るとしたら、いくらかかりますか?」と見積もりを取り、それをもとに計算します。しかし評価対象となる庭園設備を持つ庭というのは、かなりの豪邸に当てはまるもので、一般家庭の庭の設備が評価対象になるのはレアケースです。