相続税評価を行う際、宅地比準方式を適用する土地にはどのようなものがあるのか、具体的な計算方法も合わせて種類別に解説していきます。また、評価対象となる土地のなかで、実際は宅地比準方式の適用が難しい場合についても言及していますので、ご参照ください。
~目次~
1.土地の相続税評価で宅地比準方式を使う場合
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!1-1.市街地農地と市街地周辺農地
相続する土地のなかで、宅地比準方式によって相続税評価を行うべきものとして、「市街地農地」や「市街地周辺農地」が挙げられます。「市街地農地」とは、基本的には、宅地開発ができる市街地区域内にある農地と考えて問題ありません。そのほかには、農地法第4条(農地の転用の制限)等に従って、都道府県知事等から農地以外に転用する許可を得られた農地も該当します。
一方、「市街地周辺農地」とは、近隣に市街地があるため、宅地化が進む傾向が強い農地を指し、代表的な具体例のひとつとして、「第3種農地」が挙げられます。農林水産省の定義によれば、第3種農地とは、対象となる土地より300m以内に鉄道の駅があるなど、著しく市街地区域に隣接している農地を指します。農地以外の土地に転用を希望する申請者の届け出があれば、原則として転用が許可される農地が第3種農地です。
1-2.市街地山林と市街地原野
相続税評価の際、農地以外にも、宅地比準方式が適用される種類の土地として、「市街地山林」と「市街地原野」が該当します。いずれも、市街化された区域内に立地する山林や原野、あるいは、宅地が広がる区域に介在する山林や原野等を意味しています。
2.宅地比準方式の具体的な計算方法
宅地比準方式による農地等の評価額は、対象の土地が宅地であると仮定した場合の地価から、宅地として使用するために必要な工事費用を控除することによって算定します。なお、整地や土止めなど、宅地造成費の算定基準は、国税庁のホームページより入手可能です。まず、左記サイトにて各都道府県を選択したのち、「その他土地関係」の項目に含まれる「宅地造成費の金額表」を確認しましょう。
以下、農地等の相続税評価額を算出するための計算式を、種類別に紹介していきます。
2-1.「市街地農地」に関する計算式
(市街地農地の評価額)=〔(対象の農地が宅地だと仮定した場合の1㎡当たりの地価)-(宅地造成に通常必要となる1㎡当たりの工事費用)〕×(対象となる市街地農地の総面積)
なお、国税庁の指定報告様式「市街地農地等の評価明細書」を活用することで、評価額を算定しやすくなります。様式は国税庁のホームページより入手可能です。
2-2.「市街地周辺農地」に関する計算式
市街地周辺農地の相続税評価額については、上記2-1.の市街地農地による計算方法で算出した金額の80%相当であると考えます。すなわち、計算式は以下のとおりです。
(市街地周辺農地の評価額)=(宅地比準方式による市街地農地の評価額)×80%
2-3.「市街地山林」および「市街地原野」に関する計算式
「市街地山林」および「市街地原野」の相続税評価額を宅地比準方式にて算定する際、基本的な計算式は、上記2-1.にある「市街地農地」の場合と同様です。
ただし、そもそも宅地造成が困難だと見込まれる場合には、宅地比準方式は適用しません。例えば、沼地が介在していて宅地には適さない土地である場合や、宅地造成に必要な工事費用が多額にのぼり、経済的な合理性を欠く場合などが挙げられます。
宅地比準方式を適用できない「市街地山林」や「市街地原野」については、評価対象地近くにある「純山林」および「純原野」の固定資産評価額に基づき評価します。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。
なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問い合わせ→記事内容に関するお問い合わせ」よりお問合せ下さい。
但し、記事内容に関するご質問や問い合わせにはお答えできませんので予めご了承下さい。